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昔から作品に触れるときは、ストーリー以上に時間や空間、身体性などを追う ------アノヒトの読書遍歴:清水節さん(前編)

編集者、映画評論家、クリエイティブディレクターとして活動している清水節さん。映画情報サイト「シネマトゥデイ」でコラムや映画評論、映画誌「FLIX」などでコラム執筆を行うなど、映画に関する企画・編集・執筆・批評・出演活動をしています。これまでに何冊か本も出版しており、2015年12月にゲームクリエイター柴尾英令さんとの共著で『スター・ウォーズ学』を、翌2016年9月には、角川春樹さんとの共著で『いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命』を上梓しました。今回は、そんな清水さんに日頃の読書の生活についてお話を伺いました。

------まず最初に、清水さんと「本」との出会いはいつ頃でしょうか?
「僕の一番最初の記憶は、幼稚園に上がる前に読んだ『文学全集』です。その中にある『西遊記』を母親に繰り返し読んでもらった記憶があります。小学校に上がってからは、図書カードに何冊読んだかを競うためにかなりの数の本を読みました。中でもハマってむさぼるように読んだのは、小学校4年のときにはじめて読んだ『時をかける少女』です」

------筒井康隆さんの作品ですね。
「はい。『時をかける少女』は、当時観ていたドラマの原作だったんです。作品を観る際、実は僕はストーリーを追うよりも、自己認識みたいなものを気にしながら探している節があります。ストーリー以上に、時間とか空間とか身体性がどうなのか、みたいなことをモチーフやテーマにしたことを追い掛けているのかもしれません。だからか、SF作品が好きなんだと思います」

------なるほど、それが今のお仕事につながってくるわけですね。これまでに特に印象に残った作品はありますか?
「テッド・チャンという中国系のアメリカ人が作者の『あなたの人生の物語』。エイリアンの来訪からスタートする作品です。これまで我々がそういうタイプの作品としてよく知っているのは、例えば1950年代の『宇宙戦争』というような、エイリアンが襲来してきて地球を侵略しようとして戦いになるというようなお話。さらに、70年代になると、映画では『未知との遭遇』という作品がありまして。これは対決ではなくて、最終的に友好的な関係に持っていかれるようなファーストコンタクト。一方で『あなたの人生』の物語というのは、そのいずれにも当てはまらないんですね」

------対立的でもなく、友好的でもない。
「そう。まず、展開が衝撃的。エイリアンらしき不思議な形をした長い楕円形の、しかも石の石英のような材質でできた、円盤なのか通信装置なのかわからないものが地球上の各地上空に現れる、というところから始まります。それで、軍が彼らとコミュニケーションを取るために、ある女性の言語学者に依頼に出向くんですね。この言語学者は、空の向こうからやって来た者たちと言葉を交わすべく、彼らの言語体系を探っていく。これがストーリーの筋ですが、実はエイリアンの言葉を知っていくうちに、彼女の認識、世界観、現実のとらえ方が変容していくんです」

------なるほど。そこにはどんなメッセージが込められているんでしょうか。
「ストーリーからちょっとそれて例としてお話をすると、『私』っていうもの、あるいは『人生』を形成しているものは何かって考えると、いろんな言い方ができますよね。すごく哲学めいた言い方もできる。『人生とは苦難の連続である』『山あり谷ありである』とかね。ただ、それを科学的に考えてみると、人生って規定できるものの連続って、実は記憶の積み重ねなんじゃないのかってことが言えます。僕は意外と記憶力が良い方で昔の映画とか覚えているんですけど、それがじゃあ古い記憶ほど遠くにあるかっていうとそうでもない。意外と順序が逆だったりもするし、等しいような位置にある気もする。そんな風にして自分の過去の記憶に関する思いっていうのを、僕はこの小説を読んでいてすごく思い出したんです」

------ありがとうございます。後編では、清水さんが影響を受けた本について紹介します。お楽しみに。

<プロフィール>
清水節 しみずたかし/1962年、東京都生まれ。編集者、映画評論家、クリエイティブディレクター。
映画情報サイト「映画.com」「シネマトゥデイ」でコラムや映画評論、映画誌「FLIX」などで執筆を行っている。2015年12月には、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開を前に、ゲームクリエイター柴尾英令さんとの共著で新潮新書『スター・ウォーズ学』を出版し、翌2016年には、『いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命』を上梓している。また、2015年8月放送のWOWOW「ノンフィクションW」の終戦70年特別企画「撮影監督ハリー三村のヒロシマ~カラーフィルムに残された復興への祈り~」の企画制作を担当し、2016年に行われた「国際エミー賞」芸術番組部門や「日本民間放送連盟賞」最優秀賞を受賞した。

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