「声を大にしていうぜ」「認めないぜ」......日本国憲法を口語訳するとどうなる?

日本国憲法を口語訳してみたら
『日本国憲法を口語訳してみたら』
塚田 薫
幻冬舎
1,188円(税込)
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とある学生が「日本国憲法を口語訳してみた」と、インターネットの掲示板に書き込んだところ、「はてなブックマーク」などで反響を呼びました。その後、口語訳の話題は朝日新聞でも取り上げられ、今年5月には学生本人が写真入りで同紙に登場。そしてこの度、愛知大学法学部の長峯信彦教授が監修するかたちで書籍化も実現しました。

憲法改正議論が盛んな昨今、憲法について関心がありつつも、どこか遠い存在と感じていた人も多いことでしょう。『日本国憲法を口語訳してみたら』の著者・塚田薫さんは、「原稿を書いたり、資料を読んだりするうちに、最初は他人行儀で『上から目線』ぽかった日本国憲法が、どんどん身近になってくるのを感じつつ、ワクワクしながら作業を進めていた」と書籍づくりを振り返っています。

それでは、実際にどのような口語訳となっているのでしょうか。例えば、日本国憲法前文。

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦 争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託による ものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法 は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」

これを口語訳すると下記のようになります。

「俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて、俺たちと俺たちのガキと、そのまたガキのために、世界中の人たちと仲よくして、みんなが好きなことできるようにするよ。また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ。それがこの憲法だ。

そもそも政治っていうのは、俺たちがよぉく考えて選んだ人を政治家として信頼して力を与えているもので、本質的に俺たちのものなんだ。あれだ、リンカーンのいった「人民の、人民による、人民のための政治」ってやつ。この考え方は人類がみんな目標にするべき基本であって、この憲法はそれにしたがうよ。そんで、それに反するような法律とかは、いっさい認めないぜ。」


見開き右ページが口語訳、左が原文と、ふたつの憲法を対比可能なかたちで掲載している本書。あまりにもコテコテな口語訳に、驚く人もいるかもしれません。口語訳だけでなく、現在の時事を踏まえたコラムを掲載するなど、難解と敬遠されがちな憲法を身近に感じられる一冊です。

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