おしゃれなCDジャケットは「日本発」の文化だった?

ポップ中毒者の手記(約10年分) (河出文庫)
『ポップ中毒者の手記(約10年分) (河出文庫)』
川勝 正幸
河出書房新社
1,296円(税込)
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 2月8日から、NHK Eテレの人気番組『デザインあ』で総合指導をとっているグラフィックデザイナー・佐藤卓さん、映像監督・中村勇吾さん、ミュージシャン・小山田圭吾さんの3名がディレクションを担当し、東京ミッドタウン内で『デザインあ展』が開催中。

 "身の回りに当り前に存在しているモノや空間をデザインの視点から見つめ直すことでデザインのおもしろさを発見してもらい、「デザイン的思考」を育むきっかけをつくりたい"という番組のコンセプトに伴い、同展も音や映像を全身で体感できる身体性に訴えかけるアート展となっています。

 アート展より一足先に小山田さんは自身の音楽ユニットCORNELIUSで『デザインあ』のサウンドトラックを発表。CDジャケットを開くと「あ」の文字と、立体ピラミッドを象ったオブジェに早変わりする特殊パッケージ仕様が施されており、音源はもちろんジャケットのデザイン性の高さが話題になっています。

 書籍『ポップ中毒者の手記(約10年分)』の著者で執筆家・放送作家の川勝正幸さんは同書のなかで、先のようなデザイン性の高いCDの特殊パッケージは日本発ではないかと語っています。90年代初頭、海外のポップスに強い影響を受けファッションごとユースカルチャーに持ち込みヒットした、フリッパーズ・ギター(小山田さんと小沢健二さんのユニット)、ピチカート・ファイブをはじめとする「渋谷系」。彼らのジャケットデザインを担当したのがコンテンポラリー・プロダクション(以下CTPP)のアートディレクターである信藤三雄さんでした。CTPPがデザインしたジャケットの特徴を、川勝さんは下記の様に評しています。

・音楽性やテーマをワン・アイデアで、明確にヴィジュアルに翻訳している
・マニアックなネタを素にしながらも、メジャー感がある
・ミュージシャンとの同時代性を感じさせる
・業界のオキテ破り的な特殊パッケージが多い

 95年に日本で大ヒットしたスウェーデンのバンド、カーディガンズのアルバム『ライフ』も、CTPPがデザインしたピチカートファイブのアルバムジャケットのアイデアが使われていたといいます。そして、この"オキテ破りなパッケージ"は川藤さん曰く、ピチカートファイブの『月面着陸』(90年)が最初。日本での「渋谷系」ムーブメントが世界に影響を与えたこの現象を川勝さんは『世界同時渋谷化』と表現しており、東京で先駆けて形にされたこの文化が、数年後ストックホルムやパリの若者たちに愛されたのだというのです。

 本書は長い間絶版になっていましたが、復刊をのぞむ多くの声に応えて文庫化。"ポップ中毒者"が語る日本のポップカルチャー史を読むことで、現在のユースカルチャーの源流に触れることができるかもしれません。

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