あの勧善懲悪の名作の裏にあった、もう一つの物語
- 『伏 贋作・里見八犬伝』
- 桜庭 一樹
- 文藝春秋
- 1,749円(税込)
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「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」八つの玉が世界に飛び散るとき、八犬士の壮大な冒険が始まる――『南総里見八犬伝』は江戸時代の作家・滝沢馬琴による有名な勧善懲悪物語。悪しきをくじき、正しきを助ける八犬士の姿は数百年経った今でもとても痛快に感じます。
しかし、誰しも心の中には弱さやずるさといった「悪」を秘めているもの。そんな私たち現代人にとって「勧善懲悪」という価値観は、どこか遠く離れた理想郷の世界のことのような気もしてしまうのではないでしょうか。
桜庭一樹さん著『伏 贋作・里見八犬伝』は馬琴による原作をベースに、完全なる勧善懲悪ではない、一歩私たちの価値観に寄り添って描かれた新たな里見八犬伝。「贋作」という潔いタイトルから読み取れるように、物語は桜庭さんのオリジナルストーリーです。
舞台は江戸。そこでは「伏」による凶悪犯罪が頻発していました。伏とは人間と犬の血を引く生き物で、ひどく残酷な面があり人々から恐れられる一方、驚くほど人懐っこいところもあるといわれています。その伏を狩りに山から江戸へやってきたのが、小さな少女で腕利きの猟師である浜路(はまじ)。浜路はよく利くその天性の鼻で伏を追いしとめていきますが、狩られる伏と時に人間的なふれあいをすることで、彼らが持つ人間らしい感覚にも触れることになります。
同作は劇場アニメーション映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』としても2012年秋に公開が決定。追うものと追われるもの、両者の奇妙で特別なひと時が描かれた新しい里見八犬伝を体感してみてください。