なでしこジャパンにあって、男子U-20の"プラチナ世代"にないものとは?

プラチナ世代のW杯 2014年・2018年の日本代表メンバー (サッカー小僧新書)
『プラチナ世代のW杯 2014年・2018年の日本代表メンバー (サッカー小僧新書)』
安藤 隆人
白夜書房
972円(税込)
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 なでしこジャパンの世界制覇に今、日本サッカー界は大盛り上がりを見せています。そんな女子サッカーの活躍に続くべく期待されているのが、若い世代の男子代表です。

 U-22は、来年のロンドン五輪を目指して9月に最終予選へ。U-17は先日の世界大会でベスト8入りしました。彼ら若い世代の成長なくして、これからのW杯で好成績を残すことはできません。

 そんな若い世代のなかでも、"プラチナ世代"と呼ばれ、特に注目を浴びているのが1992年生まれの才能溢れる選手たち。彼らは2014年のW杯(ブラジル大会)時には22歳、2018年(ロシア大会)では26歳と、脂ののった時期に大舞台を迎えることとなります。

 ユース世代のエキスパートと呼ばれるフリージャーナリスト・安藤隆人さんは、このプラチナ世代に注目し、書籍『プラチナ世代のW杯』(白夜書房)のなかで、次のように分析しています。

 まず、"プラチナ世代"に該当するのは、バイエルン・ミュンヘンへの移籍が決まったMF宇佐美貴史や、フェイエノールトでファンの心を掴んだFW宮市亮、鹿島の大型新人MF柴崎岳、昌子源(鹿島)、福森晃斗(川崎F)、小島秀仁(浦和)、鮫島晃太(広島)、宮吉拓実(京都)、堀米勇輝(甲府)、杉本健勇(C大阪)といった面々です。若くして世界の舞台やJリーグで活躍しているのが特長です。

 そのため、プラチナ世代は小野伸二らかつての"黄金世代"とよく比較されますが、彼らとは決定的な違いがあります。黄金世代はワールドユース(現U-20)で準優勝を果たしていますが、プラチナ世代はU-13の世界大会で優勝したものの、U-17W杯では3戦全敗でグループリーグ敗退。U-19アジアユースでも敗れ、2011年のU-20W杯への出場権を得ることができませんでした。

 個々の技術は間違いなく高く、攻撃も非常に迫力があるのですが、個々の状況判断がチームとしての目的にマッチせず、それが敗因になっていることが多いようです。 格下イエメンとの試合では、組織的サッカーを駆使するイエメンに対し、あくまで同じテンポで同じプレーを繰り返すばかり。結果、2対1で敗れてしまいました。

 また、韓国の高校生チームに0対9という大敗を味わったこともあります(宇佐美・宮吉など一部選手は欠場)。相手の素早い出足と迷いのない仕掛けについていけず、日本は機能不全に陥りました。 初歩的なミスやプレーを連発し、失点を重ねていったのです。

 個々の選手は世界で評価されているにも関わらず、チームとして結果を残せないプラチナ世代。彼らの問題点について安藤さんは、試合の状況に応じてチームの方向性を決断し、それを伝達するリーダーシップを持った選手がいないことだと指摘します。中田英寿や本田圭佑、そして、なでしこジャパンの澤穂希のようなチームを鼓舞し強烈な活を入れるリーダーを育てることが、プラチナ世代の成長の鍵なのです。

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