「スタンフォードの学生売ります。1人買えば、2人目はオマケ」
- 『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』
- ティナ・シーリグ,Tina Seelig,高遠 裕子
- CCCメディアハウス
- 1,525円(税込)
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アメリカ・スタンフォード大学の起業家育成コースで教鞭をとっているティナ・シーリグさん。これまでに数多くの優れた起業家を育成してきた彼女が、その授業のエッセンスを著書『20歳のときに知っておきたかったこと』にまとめています。
本書でシーリグさんは、実際にスタンフォード大学で行った様々な講義を例に、ビジネスにおける「起業家精神の重要性」について述べています。以下に、そのひとつを紹介しましょう。
ある講義でシーリグさんは、学生たちをいくつかのグループに分け、それぞれに「10個のクリップ」が入った封筒を渡し、こう指示しました。
「これから5日間、このクリップを使って、できるだけ多くの『価値』を生み出してください」
それを聞いた学生たちは、とてもユニークな方法でそれぞれの「価値」を具現化しました。なかでもシーリグさんが「いちばん面白かった」と語るのが、次のようなチームの報告です。
このチームはクリップを使って、あるポスターを近所のショッピングセンターに掲示。そこにはこう書かれていました。
「スタンフォードの学生売ります。1人買えば、2人目はオマケ」
これを見た人からの依頼は、重い荷物を持って欲しいというものや、リサイクルショップでの手伝いといった普通のものから、仕事で行き詰まっている女性による「ブレイン・ストーミングに付き合って欲しい」という変わったものまで、実に多様なものでした。ちなみにこの女性は、使っていないパソコン用のモニターをお礼にくれたそうで、このひとつの依頼だけでも、ただのクリップが家電製品に化けたことになります。
こうした例をもとにシーリグさんは、「元手がないのは言い訳にならない」として、こう「起業家」を定義します。
「起業家とは、チャンスになりそうな問題をたえず探していて、限られた資源を有効に使う独創的な方法を見出し、問題を解決し、目標を達成する人を指します。たいていの人は、問題にぶつかっても、解決できるはずがないと端から決めてかかっているので、目の前に独創的な解決法があっても気づかないのです」
こうしたシーリグさんの言葉は、起業家に限らずほとんどのビジネスマンに当てはまるのではないでしょうか。行き詰まったときこそ、ありきたりな解決策にとびつくのではなく、一歩引いて、より広い視野で問題を眺めてみることが必要なのです。