仕事オンチな働き者
- 『仕事オンチな働き者 日経プレミアシリーズ』
- 山崎 将志
- 日本経済新聞出版
- 935円(税込)
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インターネットは非常に多様な情報が溢れているメディアですが、そのなかから自分が本当に信頼できる情報を見つけることは容易ではありません。
特に、掲示板の書き込みや、ツイッターやミクシィといったソーシャルメディアには匿名の人がほとんど。そのため、忌憚のない貴重な意見もある分、一方ではデマや出所の怪しい噂も選別されないままに流れてしまいます。
また、ネットでは「他の人も書いていましたが......」と前置きした上で、自分の意見を述べる書き方が常套句のように機能しています。ある意味、ネット文化は「引用」で成り立っていると言っていいかもしれません。ですが、こうした「引用」こそが、自分にとって「本当に役立つ情報」を見えなくさせるひとつの原因となっているケースもあるのです。
例えば、グルメ口コミサイトの「食べログ」で、ある料理に対し「値段の割にイマイチ」という書き込みがあったとしましょう。それを見た人は単純に「値段の割にまずい」と受け取り、その情報をネットだけでなく実社会でも拡散します。しかし、そもそも書き手と自分の好みが同じであるとは限らない以上、他人の意見をそのまま鵜呑みにするのは問題があるのではないでしょうか。
書籍『仕事オンチな働き者』(日本経済新聞出版社)の著者である山崎将志さんの友人には「"超"がつくくらいの『バーミヤン好き』がいる」そう。ファミレスの中華料理版ともいえる同チェーンですが、実は、この友人は世田谷の豪邸に住み、立派なマンションまで所持している大手銀行員なのです。
こんな人物が「バーミヤンが好き」と言うことと、ごく平均的な家庭に暮らす人が語る「バーミヤンが好き」は、果たして同じことを指しているのでしょうか。山崎さんは疑問を投げかけます。
言葉としては全く同じことを語っていても、それをどんな人物が話したかを知ることで、印象が全く異なるということは少なくありません。ですから、ネットに情報を求める際には、安易に言葉を「引用」するのではなく、その裏にある「文脈」についても、ちょっと立ち止まって考えてみる必要があるのです。
ネットは匿名であるからこそ発達したメディアと言われています。しかし、その反面、言葉の裏に隠されているものが見えづらくなってしまうこともあるのです。