連載
続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!

第17回 『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』スザンヌ・トッド

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』プロデューサー、スザンヌ・トッド氏

映画情報連載「続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!」の17回目は、前回のジェームズ・ボビン監督に続いて、現在大ヒット公開中の映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の剛腕プロデューサー、スザンヌ・トッド氏を直撃取材! 製作過程で大変だったことは「全部(笑)!」と語るトッド氏だが、格段に進歩する技術と比例するように映画人としてのクオリティーを高めたい欲求も上がり、壮大な"時間の旅"を経てしまった模様。それだけに主人公アリスのように、過去に戻って何か変えたいこともあったのか......。


――前作は鬼のようにヒットしたと思いますが、どのようにして今作の方針が決まりましたか?
 
1作目があれほど大成功を収めたけれど、誰も続編をやることを計画していなかったの。それで単に続編をやるのではなくて、やるだけの価値があると感じられるストーリーを決めるために、すごく長い時間がかかったのよ。そしてまた、ルイス・キャロルから"取ったもの"を作ることに時間がかかったわ。なぜなら「鏡の国のアリス」には、ストーリーラインがなかったからよ。チェスの試合についての8章だから。とてもエンターテインメントだけれど、三幕構成の映画のために、そこから引き出せるものは何もなかったわ。

――今回、おどろおどろしい精神病棟とか、現実世界の描写がよかったとう声も出ていますね。
 
あの時代、医者が彼女を看た場合、社会的に考えても、あのような事態になったはずなの。だから、その当時の現実を見せたのよ。女性に対して、そういう見方をしていた時代よね。そこから進歩した、したいという意味も込めて、あえて撮ったシーンなのよ。

――全工程のなかで、もっとも難航した作業は何でしたか?
 
全部よ(笑)! もちろん、理由があるの。まず、キャストをすべて戻すこと、このスケジューリングがひどく大変だったわ。撮影自体もブルースクリーンを多用して大がかりなセットを組み、ビジュアルエフェクトのシーンではものすごく複雑な撮影をしなくてはいけなかったので、時間がかかったわ。ポスト・プロダクションでは、ビジュアルエフェクトのショットが2,000もあって(笑)。毎日作業して、18か月。1年半もかかったのよ。

――気が遠くなりますな(笑)。ところで今回のアリスのように、過去に戻って現在の何かを変えたいと思いますか?
 
自分の子どもたちには、それほど過去に囚われないように、そういうことはマイナスだと言っている手前、あえて戻りたいとは思わないわ(笑)。反対に、戻れないからこそ、いろいろな教訓を得るので、何も変えないでいいわ。

――まさしく、今回の映画のテーマを実践しておるわけですな!
 
過去のことに囚われているということは、いまの自分がそれだけのエネルギーを使ってしまうということを意味するの。過去に起きたことは起きてしまったことなので、それを変えることは無理よね。変えたいと思うよりも時間がいかに大切かということを知れば、1日5分でも過去に囚われると、それが無益な時間ということがわかる。大事なことだと思うので、良い時間の使い方を考えたほうがいいわ。

――さて、この映画ですが、友だちが一人もいない人には、どうすすめていただけますか?
 
実はアリス自身、孤独感を味わっている子なのよね。母親とも衝突するし、社会にもうまく入っていけない。自分がユニーク過ぎて、ほかの人たちと同じようにはならないの。だから、いつも葛藤があるでしょう? それこそそういう人たちは、楽しめると思うわ!

(取材・文/鴇田崇)


<STORY>
ティム・バートン、ジョニー・デップをはじめ、豪華スタッフ・キャストが集結した、『アリス・イン・ワンダーランド』の"はじまり"の物語。
悲しい過去に心を奪われ、帰らぬ家族を待ち続けるマッドハッターを救うため、時間をさかのぼるアリスの冒険を描くファンタジー・アドベンチャー。彼女を待ち受けるのは、秘められた真実と、時の番人"タイム"との戦い...。はたして、運命に逆らい、過去を変えることはできるのか?
全世界を魅了したあの「アリス・イン・ワンダーランド」のチェシャ猫たちや"赤"と"白"の女王も再結集。彼女たちの幼年期の驚くべき<秘密>も明らかになる。

映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、大ヒット上映中!
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C) 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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鴇田崇(ときた・たかし)

1974年生。国内最大級のアクセスを誇る総合映画情報サイト「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在はフリー。年間延べ250人ほどの来日ゲスト、俳優、監督への取材を行い、雑談のような語り口で相手のホンネを引き出すスタイルは、一部の関係者に定評がある。史上もっともアガッたインタビューは、あのM・ナイト・シャマラン監督に「キミの体からは気が出ている!」とホメられたこと。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。

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