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『ニュースの天才』 スクープという記者の病

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 ニュースを扱うライターや記者にとって、スクープとは自らの存在価値であったり出世するための必須条件であったり、各人にとって理由は様々だが大多数にとって「何としても獲りたいもの」であるのは間違いない。実際、筆者がニュースの現場で働いていた時スクープを獲れば英雄、獲れなければ人権さえ怪しいレベルで虐げられる場面をしばしば目にした。職場環境がそんな具合だからなのか、血眼でスクープを追う人間が集まった組織ゆえなのか判断はつかないが、スクープこそがすべてであり、その他は評価の基準にならない些事である。

 本作の主人公スティーブン・グラス(ヘイデン・クリステンセン)は著名な政治雑誌『ニュー・リパブリック』の最年少記者でありながら、両親の希望で意に沿わないロースクール通いを余儀なくされている。ジャーナリスト志望のグラスにしてみれば、ニュースの一線にいるというのに学校で興味のない勉強をすることは退屈であろうことは容易に想像できる。それでも記者と学生の二足の草鞋を履きながらも、優れた記事を書いて編集長や同僚から実力を認められていく。
 ところが、主人公を高く評価していた編集長は社長とトラブルを起こし解雇。後任の編集長はさして有能でないため現場の士気は明らかに下がってしまう。それでもグラスは大手コンピュータ会社がホームページをクラックしたハッカーを多額の報酬などでスカウトしたという記事をすっぱ抜く。
 このような大きなニュースを独占で書かれた他社は、後追い取材を行うが調査する過程で全くのデタラメだったと判明。その後、社内調査を行った結果、グラスの書いた記事はほぼ、でっち上げであると明らかとなる。

 冒頭でも書いた通り、ニュースの現場ではスクープこそが命であり、書いた数で地位や収入は上昇していく。その行為に読者の視点というものはほぼ無視されていると言っていいだろう。スクープの結果として、読者の知る権利を守るという意味はあるが。
 そんな世界にジャーナリスト志望の若者が入り込んだらどういう結果になるか。簡単にスクープ至上主義者が出来上がるだろう。
 一般に、ニュースを扱う人間はスクープを得るため人脈の駆使から現場の徹底的な観察など、地を這うような活動を行っている。勉強で取材する時間も満足にない人間が365日24時間ネタを追う記者を上回る結果を出すにはどうすればいいか。手っ取り早い方法というか唯一の方法は捏造だろう。

 報道関係者がスクープを追わなくなったら、単なる広報になってしまう。提灯記事だけが雑誌、新聞、テレビに流れている世界は間違いなくディストピアだろう。

 本作はメディアがスクープというものと、どう折り合いをつけるかという難問を突き付けているように思える。そして、この問題は永遠に解決することはないだろう。
(文/畑中雄也)

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