インタビュー
映画が好きです。

VOL.34 園子温監督/『東京ヴァンパイアホテル』

小さい頃からヴァンパイア映画が大好き。ダンディでセクシーで美しい! 園子温監督

園子温×ヴァンパイア! この組み合わせだけで涎が出そうな、しかも映画ではなくてオリジナルドラマが、今週金曜、6月16日(金)よりAmazonプライム・ビデオで配信決定! ドラキュラ伝説を下敷きにした、園監督による初のオリジナル脚本ドラマ『東京ヴァンパイアホテル』。ヴァンパイアの聖地・ルーマニアロケも敢行した注目作について、園監督ご本人が語ってくださいました!


◆◆◆

──ヴァンパイアを題材にドラマをつくろうと思ったきっかけは?

「小さい頃からクリストファー・リーの『吸血鬼ドラキュラ』が大好きでした。それ以降もヴァンパイア映画はたくさん、面白く観ていましたので、ヴァンパイアはやりたい分野の一つでした。ただ、日本では吸血鬼ものって定着していないし、あまり人気もないので、実現するのはなかなか難しかった。

そんななかでひとつのきっかけとなったのが、ルーマニアで毎年行われているトランシルヴァニア国際映画祭。昨年、僕の特集上映をやってくれまして(園子温レトロスペクティヴ)、ルーマニアにも行ってみたかったし、映画祭に行ったついでにドラキュラ城をはじめルーマニアをくまなく見てきました。そこで、昔からやりたかったヴァンパイア映画をやっぱりつくりたいなと思っていたら、Amazonの話がありました。映画のオリジナル企画ではなかなか予算が付けられないのですが、Amazonプライム・ビデオでドラマでやれば予算が出るかなと、やることにしました」


──園監督にとってドラキュラの魅力は?

「ほかのモンスターに比べてダンディでセクシー。古典的なところもいいですね。非常に美しい感じがします」


──西洋の代表的なモンスター×東京という組み合わせで、苦労したことはありますか?

「そこには苦労はありませんでした。ただ、1話約40分で、僕は7話まで担当したんですが、7話つくるのはものすごくハードでした。映画をつくるよりも断然体力を使うので、非常にきつかったですね。脚本も途中までしかできていないままクランクインしちゃったので、撮影しながら書いているような感じ。映画で脚本が間に合っていないなんてあり得ないことですから、やっぱり今回は大変でしたね......」

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──脚本に関して、映画と違ったこだわりは?

「ドラマならではのこだわりというのは、特にありませんでした。1話完結ものでもないですし、とにかくずっとホテルの中というシチュエーションで、いかにして面白くできるかを考えました」


──映画よりも、より多くの時間を使って表現することについて、面白さは感じましたか?

「モノにもよりますが、今回のドラマはずっとテンションが上がりっぱなしなので、きつかったですね。普通なら1回くらいは落ち着くところがあるんですがね。基本的には一晩から二晩の話で、たとえるなら『24 -TWENTY FOUR』並みに緊張感が上がりっぱなし。『24 -』はCMがあるからまだいいんですが、これはCMがない『24 -』みたいな感じですから、ずっと大変でした」


──主演の夏帆さんは、今回が初の本格アクションとのことで、撮影現場ではいかがでしたか?

「アクション監督の匠馬敏郎(坂口拓)は、『TOKYO TRIBE』や『愛のむきだし』など、ずっと一緒にやっている人ですから、やりやすかったですね。夏帆も非常にがんばってついてきてくれました」

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──撮影はどのくらいの期間かけられたのですか?

「10月にルーマニアロケでクランクインして、11月、12月、1月に入ってからも少しやっていたので、長かったですね。今回、ドラマの説得力という意味でも、ルーマニアロケはとても重要でした。ドラキュラという存在をかみしめながらやることに意義があるかなと」


──ドラキュラの聖地であるルーマニアで撮影されて感じたことは?

「ヨーロッパは歴史がそのまま壊れずに残っているから、そのへんの道ばたに転がっている石ころですら、300年前のものだったりする。そういう中で撮影するのは、本当にロマンチックでしたね。それからルーマニア滞在中には、ちょっとした怪奇現象も起きました。撮影前から急に僕の皮膚に歯形のような、爪痕のようなものが現れたり、冨手(麻妙)のホテルの部屋にコウモリが忍び込んできたり。ドラキュラがどこかで僕らを見ていたのかなって」


──ドラキュラ族とコルビン族、ヴァンパイアの2種族による抗争を描いていますが、ドラキュラ族を演じているのは全員ルーマニア人ですか?

「ルーマニア人がやっています。そこも大事です。ドラキュラといえばルーマニア。お岩さんを日本人がやるのと一緒です。韓国人や中国人がお岩さんをやったらちょっとおかしい。お岩さんは日本人がやるべきでしょう? だからドラキュラ族はルーマニア人がやらないと。その代わり、コルビン族は日本人が演じています。ちなみにドラキュラのモデルとされた人物が幽閉されたのは史実で、そこで思いついたのが、そこから、コルビン族をネオ・ヴァンパイアとして、ドラキュラ一族をずっと地下に幽閉している、という設定にしました」


──特にお気に入りのエピソードはありますか?

「1話は気に入ってますね。初期の頃に撮っていたので、時間にまだ余裕があって、そこそこ贅沢に撮っている感じがありました」


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──最後に、監督の好きなドラキュラ映画ベスト3を教えてください。

「1位はダントツで『吸血鬼ドラキュラ』(1958)。クリストファー・リーがドラキュラを演じ、それを倒そうとする教授をピーター・カッシングが演じています。ドラキュラ映画のなかで最もクラシックなものですが、ここに全部が詰まってる。何度もリメイクされていますが、クリストファー・リーのドラキュラがめちゃくちゃ格好いい。それに対抗するピーター・カッシングも格好いい。

2位は『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960)ですかね。『吸血鬼ドラキュラ』の続編ですが、最初の作品ではフィーチャーされていないエロティックな表現が出てきます。やっぱりドラキュラ映画はエロスなくしては語れないですよね。今回のドラマでは、噛みつくシーンが少なすぎちゃったかなというのが反省点。今度つくるとしたら、もっとしっとりとしたものにしたいなと思っています。
『吸血鬼ドラキュラ』も『吸血鬼ドラキュラの花嫁』も小学生の時に観た映画ですが、すごく影響を受けましたね。

3位は『フライトナイト』の古いほう(1985)。新しくリメイクされたほう(フライトナイト/恐怖の夜)はダメ。これは打って変わって現代風のヴァンパイア。ドラキュラはあまり関係ないけど、ヴァンパイアがちょっとロックスターっぽく出てくるところが面白いですね」


──気が早いですが、「2」の可能性は?

「たとえばホテルの造形も、もっと予算があれば、もっと肉々しいものにしたかった。脚本の段階では、とにかくずーっと裸体が続いているような手すりだったり、そんなものを構想していました。予算の関係で、そういうホテルではなくなったんですけど。またお金ができたらやりたいなと。次はAmazonが10倍の予算をかけて"ヴァンパイアホテル2"となれば、当然やる気が出ますよね。本当に肉体っぽい造形のホテルができたら最高。それだったら僕もまたやりたい。今のところは疲れてしまっているけれど(笑)。予算がそんなにおりるなら、飽きもせずに飽くなき戦いが始まりますよ!」

園子温監督、ありがとうございました!

(写真/岩本良介 取材・文/根本美保子)


***

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『東京ヴァンパイアホテル』
6月16日(金)よりAmazonプライム・ビデオにて全9話独占配信!

総監督・脚本:園子温
8話・9話監督・脚本: 久保朝洋、松尾大輔
8話・9話脚本:継田淳、碇本学
出演: 夏帆、満島真之介、冨手麻妙、神楽坂恵、安達祐実 ほか
企画・制作:日活
©2017NIKKATSU

<あらすじ>
22 歳の誕生日を迎えるマナミ(冨手麻妙)を付けねらう謎の吸血鬼たち。強大な力を持つK(夏帆)は彼女を怒涛の戦いの中で救おうとするが、謎の男・山田(満島真之介)に連れ去られてしまう。その日、若い男女ばかりがホテル・レクイエムに招待される。そこで、ホテルを取り仕切っている山田により、明日世界は滅び、ホテル内にいる人間だけに助かる道が残されていると宣言される。実は山田をはじめとしたホテルのスタッフは吸血鬼コルビン族であり、人類は彼らから食らわれ続けるしか存続の道がないのだという。そこへ、マナミを奪取しようとする Kがコルビン族を滅亡させるべく乗り込んでくる。かくして、人類と吸血鬼たちの存亡をかけた戦いが始まる―。

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園子温(その・しおん)

1961年12月18日、愛知県生まれ。17歳で詩人デビュー。「ユリイカ」「現代詩手帖」に続々と詩が掲載され、"ジーパンをはいた朔太郎"と称される。法政大学入学後、8mm映画を手掛ける。『俺は園子温だ!』(85)がPFF入選、『男の花道』(87)でグランプリを受賞。近年の主な監督作に、『愛のむきだし』(08)、『冷たい熱帯魚』(11)、『恋の罪』(11)、『ヒミズ』(12)、『希望の国』(12)、『TOKYO TRIBE』(14)、『新宿スワン』(15)、『ラブ&ピース』(15)、『リアル鬼ごっこ』(15)、『映画 みんなエスパーだよ!』(15)、『ひそひそ星』(16)、『新宿スワンⅡ』(17)、『アンチポルノ』(17)など。世界的にもっとも評価されている日本人映画監督の一人。

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