「おせち料理」に込められた意味 未来に残したい食文化

残念和食にもワケがある - 写真で見るニッポンの食卓の今 (単行本)
『残念和食にもワケがある - 写真で見るニッポンの食卓の今 (単行本)』
岩村 暢子
中央公論新社
1,620円(税込)
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 あなたは昨日、何を食べたでしょう? 朝はパン、昼はパスタ、夜は中華丼のような食事という人も多いはず。家で「和食」を食べていますか?

 「和食 日本人の伝統的な食文化」として、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されたほど、世界で高い評価を受けている「和食」。旬の素材を生かしたヘルシーで繊細な味わいと、彩り豊かな盛り付けが舌にも目にもおいしいと、海外でも人気です。でも日本の家庭ではどうでしょう。「和食」は、今も日本人の日常食と言えるでしょうか。

 『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの食卓の今』の著者・岩村暢子さんは、1998年から20年にわたって食と現代家族の調査・研究を続けています。本書は、400人以上の主婦へのアンケートと1万5000枚以上の食卓写真をもとに、現代日本の家庭で食される「和食」を描き出したものです。

 例えば、「白いご飯は味がないから苦手」という声は、子どもたちを中心に年々数を増し、チャーハン、炊き込みご飯、丼飯などが食卓に並ぶ頻度は、この十数年で急増しているとか。2014・15年の調査では、こうした「味付きご飯メニュー」が夕食に出る米飯類の5割近くになっていると岩村氏は言います。

 また、主食(ご飯)・汁物(みそ汁)・主菜1品(肉や魚介の焼き物や煮物)・副菜2品(切り干し大根や煮豆、お浸しなど)を理想とする日本の伝統的な食事スタイル「一汁三菜」。ユネスコ無形文化遺産登録の際に和食の大きな特徴とされたものですが、最近では、みそ汁や副菜は作るのも食べるのも「面倒くさい」「煩わしい」と嫌われ、家庭の食卓から姿を消しつつあります。著者は、この傾向を後押ししているものとして、「好きなものだけガッツリ食い」志向の蔓延や「孤食」や「ながら食い」をあげています。

 「本書を読まれると、その減少ぶりにがっかりしたり、崩れ方のさまざまに『これでも和食と言えるのか』と眉をひそめたりする人もいるかもしれない。だが、私の意図は、その現状を『何たることか』と批判したり、『和食』の復権を説いたりすることにはない。」と筆者は説き、以下のように続けています。

 「『和食』を支え続けていた、日本人の伝統的な自然との向き合い方、古くからの価値観、日本の家族の関係、日本人の個のあり方、そして働き方や暮らし方が、いつの間にかすっかり変わって、それらを前提として成り立っていた和食は、もう現代の食卓に馴染まなくなってきたのではないか、ということが浮き彫りにされてくるのだ。」(本書より)

 もうすぐお正月。家族そろって新年を祝う晴れの日には、おせち料理がよく似合います。伝統的なおせち料理には一品一品に意味があり、数の子は子孫繁栄、田作りは五穀豊穣、海老は長寿と、それぞれに願いを込めて作られ、その1年の幸せを祈りつつ食するものとされてきました。また、それらを重箱に詰めて重ねることで、おめでたいことがさらに重なるようにという願いが込められていると言われています。

 本書を開いて目にする現実は、私たちが今、日本に古くから伝わるものにどう向きっているかをまざまざと見せつけるものです。それを変えることは難しいかも知れませんが、せめて、おせち料理を食べながら、日本古来の食文化に思いを馳せてみませんか。

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