もやもやレビュー

【無観客! 誰も観ない映画祭 第61回】『大福のメルヘン村探検』

『大福のメルヘン村探検』

『大福のメルヘン村探検』
2024年 ワンダーヘッド配給 137分
企画・構成/福田裕彦
出演/福田裕彦、浅倉大介、徳久望ほかメルヘン村の皆さん

『大福のメルヘン村探検2 リズムさんのうた』
2026年 ワンダーヘッド配給 88分
監督/福田裕彦
出演/福田裕彦、浅倉大介、徳久望ほかメルヘン村の皆さん

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 はい、タイトル見ただけでは何の映画だか見当もつきませんね(汗)。「大福って何?」「メルヘン村ってどこ?」。ポスターの第一印象は「ホラー映画かな?」でした。着ぐるみ風のアニマトロニクス(コンピューター制御による機械人形)が人を襲う『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(24年)みたいな。

 さて、筆者は映画やドラマを観る時には、監督とキャスト以外の事前情報には極力耳を塞ぎます。オンタイムで「え?」「おお〜」と驚いたり唸ったりしたいからです。この作品は、そんな筆者の変な映画嗜好と、その鑑賞スタンスを知っている友人から「見てのお楽しみ♪」と薦められました。

 今年の6月、梅雨のさなか下北沢にあるシモキタ-エキマエ-シネマK2へ、『大福のメルヘン村探検2 リズムさんのうた』を観に行きました。「『2』から観て大丈夫か?」と思いましたが、1作目は劇場未公開で、公式オンラインショップで販売しているブルーレイディスクでしか観れません。後でそのディスクを観ればイイヤって感じでした。しかし、その1作目が一部の間で静かな反響を呼び、なんと続編が劇場作品としてスクリーンで上映される運びとなったのです。

 そして2作目の監督にクレジットされている福田裕彦。筆者は特撮好きなので、この名を知っています。河崎実監督の『ギララの逆襲』(08年)や、円谷プロのテレビドラマ『ウルトラゾーン』(11〜12年)の音楽を手掛け......というか、浜田省吾を筆頭に松田聖子、尾崎豊、爆風スランプなど数々の有名アーティストのアルバムレコーディングやライブツアーにキーボード奏者として参加し、作曲・編曲に関しても小泉今日子ほか数え切れないほど実績のあるミュージシャン! 本作品が映画監督デビューというから楽しみです。さらに相方の浅倉大介と言えば、シンセサイザーミュージックのレジェンド。小室哲哉とは古くからの付き合いで、TM NETWORKのサポートメンバーとして長い間携わり、やはり多くのアーティストに関わってきました。この両人は各々の名前から一文字とった「大福」というユニットを組んでいたのです。

 そんな音楽業界の重鎮両名が、この映画で何をしたかったのか? 蓋を開けてビックリ、「日本一狂った遊園地」と呼ばれる、佐賀県にあるメルヘン村の体験ドキュメンタリーだったのです! YouTubeの「行ってみた」長編版と思ってください。メルヘン村は、東京者の筆者にとって初めて聞く遊園地ですが、九州の住人には知られた存在なのでしょう。またメルヘン村の公式Xが凄いのです。「今日も客が来ない......」「潰れてない、潰れてない(計10回リフレイン)」などと自虐的に呟き、リスやウサギなどのユルキャラが寂しく写し出されています。ところがですよ、フォロワー数は7万超え! これはひょっとして、筆者も毎夏プールで泳いだとしまえん遊園地(2020年閉鎖)が「史上最低の遊園地」「くるんじゃなかった!!」とやっていたネガティブキャンペーンみたいな情報操作なのでしょうか? このメルヘン村が気になって居ても立ってもいられなくなった福田氏は、あんな遠隔地まで現地調査を決行することにしたのです。

 まずは1作目から紹介していきましょう。冒頭、浅倉氏の御自宅。世界に5台しかないシンセサイザーの前で、2人の会話が始まります。ちなみにこのシンセサイザー、業界ではその見た目から「タンス」と呼ばれています。福田氏の企画を聴いている浅倉氏が「メルヘン村って、B級ホラー映画のタイトルかと思いました」。これを聞いた筆者は思わずウンウン頷きました。そして福田氏は、メルヘン村の公式ホームページにある衝撃的な記載をクローズアップします。「嬉野温泉から徒歩70分」......。嬉野温泉とは佐賀県の観光地ですが、そこから「徒歩7分」の誤表記でなく「徒歩70分」なのです。ふつー書くか〜! って感じですが、メルヘン村運営は書くのです。

 で、これに大福コンビが乗っかります。本当に歩いて70分で着くのか実行してみたのです! 果たして何分後に到着したかは本編を観てもらうとして、達成すべき目標があと3つあります。メルヘン村のキャンペーン曲を、世界に5台しかないシンセサイザーでアレンジしてミュージックビデオを制作! しかも訪問することは告げていても、それは運営スタッフと顔を合わせてから初めて切り出すというハラハラのチャレンジ! そして頼まれたわけでもないことを百も承知の大福は、メルヘン村にギャラを一銭も要求しません! そのまま全アトラクションを制覇し、ラストは嬉野温泉で身体を癒して締めるという計画です。

 大のディズニーランド・フリークとして知られる浅倉氏は、いかなる視点でメルヘン村を捉えるのか興味津々でしたが、計画実行中に一言「脳内メルヘン」と表現しました。言い得て妙ですね。そして謎のキーワード「ラードン」とは? 果たしてメルヘン村に生息する空の大怪獣なのでしょうか? ラドンは九州出身の怪獣ですし。

 それから2年後、福田氏が懲りずに初監督作品として製作したのが、続編『メルヘン村の逆襲』、じゃなくて『大福のメルヘン村探検2 リズムさんのうた』でした。リズムさんというのは、1作目でモブキャラだったメルヘン村の蜂のぬいぐるみキャラです。リズムさんは大福と徳久望氏(メルヘン村の楽曲担当者)が楽しげな音楽を演奏していても、名前がリズムなのに他のぬいぐるみさん達のようにリズムをとることもなく、スンと立ち尽くしているのです。しかも普段は夜しか現れないそうです......ってメルヘン村の閉園時間は17時。意味がわかりませんね。

 この異彩を放つ鬱キャラのリズムさんが気になって仕方ない福田氏、メルヘン村リピートを決意したのです! なんて物好きなのでしょうか。いや、修羅場を潜ってきたオトナの余裕なのですね。ついでに前回乗り損ねたアトラクションにも再挑戦です。今回はさすがに車で行き、たった11分で着きました(笑)。そして2年経つと、窓口手売りのチケットが自動券売機に! 1作目が宣伝効果をもたらし、メルヘン村は景気回復したのでしょうか?

 さて福田氏は、またしてもメルヘン村スタッフ幹部のお2人にサプライズで企画を持ち込みます。リズムさんを元気づける歌を作り、彼の前で演奏するというプレゼンを、ショッカーで言えば死神博士と地獄大使に汗タラタラでプレゼンするのです。断られたら尻尾を巻いて帰る覚悟です。果たして酔狂な福田氏の思い付きを、メルヘン村幹部達は聞き入れてくれるのでしょうか。というか、ヨルシカ状態のリズムさんが、そもそもステージに現れてくれるのでしょうか? 物語はスリリングに進行していき、ラストは感動必至です。

 ちなみに、福田氏が社長を務める「大頭」が製作した同時上映のモノクロ・サイレント映画『メルヘン・ハニー』(監督脚本・垣江紀壱、主演・大野大輔、山本愛莉)は、メルヘン村を舞台に男女愛を描くオシャレな作品。音楽はもちろん大福が手掛けています。

 両作品を観終わって、ふと思いました。この福田・浅倉両氏は、言わば天才の部類に入るエンターティナー業界の住人なのですが、共通して1ミリも偉ぶらない。どんな人にも対等に接します。これは1作目でお二人が人に対する自分のスタンスを互いに話していて、そこからも人柄が滲み出ています。福田氏は「勝手に歌作ってイヤな思いしてないかな」などと常にリズムさんの心情を気遣い、浅倉氏の愛犬はゴールデンレトリバー。それだけでも人として合格です(個人の感想です)。

 作品は、ただただノホホンとした時間が過ぎていきます。仕事に疲れたら、人間関係に疲れたら、スマホ疲れにも、この作品を無心で観る事をお勧めします。観れば解りますが、そこら辺のYouTubeがダラダラやってるのではなく、日本の音楽史に数々の歴史を刻んできた2人の天才がバカやってる。それが尊いのです。この2作品をガイドに、ぜひ佐賀県のメルヘン村を一度訪れてみてください。そして元気な方は、ぜひ嬉野温泉から徒歩でトライしてみてください(笑)。あなたにも脳内メルヘンの旅を!

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【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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