官邸に君臨する"苦労人" 菅義偉は首相の座を狙わないのか?

影の権力者 内閣官房長官菅義偉 (講談社+α文庫)
『影の権力者 内閣官房長官菅義偉 (講談社+α文庫)』
松田 賢弥
講談社
886円(税込)
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 時事通信が1月に調査・発表した世論調査では、「次期首相にふさわしいと考える政治家」の第1位は小泉進次郎衆議院議員に、2位は現職の安倍晋三首相、3位は石破茂地方創生相という結果になりました。一方で、現政権内にいる"実力者"、菅義偉内閣官房長官は、民主党の岡田克也代表、麻生太郎財務相、民主党の前原誠司氏に次いで7位という結果に。

 歴代3位の在任期間を誇る名参謀でありながら、7位というのは少し寂しい気もしますが......。この"不人気"の理由は、彼の「出自」にも関係しているのかもしれません。

 振り返れば、安倍現首相、鳩山由紀夫氏、麻生太郎現副首相、小泉純一郎氏......と、直近10人の首相経験者のうち7人は実父が国会議員だった人物。一方の菅氏はといえば、二世政治家でないどころから、秋田県出身にも関わらず選挙区は衆議院神奈川2区と、看板も地盤もありません。

 書籍『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』には、菅氏の細かな生い立ちについて、次のように書かれています。

「秋田の豪雪地帯にある高校を卒業し、上京してから二年、そして大学を出てからも二年、計四年のブランクの間、菅は板橋の段ボール工場や新宿の雑居ビルの飲食店での皿洗いなどに従事し、また電気設備会社に身を置いて働いていた。神奈川・横浜の小此木彦三郎衆院議員の秘書として仕えたのは二六歳の時である。それから一一年、秘書を務めた後に横浜市議から衆院議員に転身」

 似たような政治家として、田中角栄氏を思い浮かべた人もいるかと思います。本書の著者・松田賢弥さんも「私は菅を土着的な政治家の、たぶん最後の存在だと思う。時代は違うが、角栄にも共通する草の根の民の記憶が菅の体内には流れている」と述べています。


 当の本人は首相の座について、どう考えているのでしょうか。本書に収録されたインタビュー部分で「(総理を目指すことは)まったくない」と断言した上で、次のように答えています。

「だって大きいことは、たとえ総理でも一人ではできないでしょう。それを支える人がいないと物事が進まない」

 もちろん、菅氏が本心を隠している可能性もありますが、少なくとも公には「自分が総理になるより、補佐をする方がいい」と明言しているのは興味深いところです。

 過去には野中広務氏、後藤田正晴氏のように「影の総理」として辣腕を発揮した官房長官もいました。おそらく菅氏も同様の形容をされることになるでしょう。今後、菅氏氏が政治家としてどのような功績を残すのかどうかはわかりませんが、日本政治を読み解くためにも、その一挙手一投足に注目してみてはいかがでしょうか。

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