大ピンチの日本酒業界が海外のブームに乗じて復権する?
- 『めざせ!日本酒の達人: 新時代の味と出会う (ちくま新書)』
- 山同 敦子
- 筑摩書房
- 1,015円(税込)
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みなさん、日本酒はお好きですか?
最近、純米大吟醸「獺祭」やスパークリング清酒「澪」など、飲みやすく美味しい日本酒が人気を集めています。これらの銘柄は、入荷してもすぐ売り切れるため、なかなか手に入りづらい貴重品になっています。ただ、日本酒業界全体を見渡すと、その状況はあまり芳しいものではありません。国税庁によると、清酒の国内販売数量は、1975年度の167万5千キロリットルをピークに減少し続けているのです。
そんな国内事情をよそに、海外では今、日本酒ブームが起きています。
たとえばアメリカでは日本から日本酒を輸入するだけでなく、老舗蔵元の杜氏をアメリカに招いて本国の職人に技術を学ばせるなどして、酒造りを始める企業も登場しています。また韓国では、小売段階で1本10万ウォン(約1万2000円)以上の高級銘柄も注文が頻繁に寄せられているそうです。ワインで有名なフランスでは、厳選された製造者が提供する日本酒を理解し、味わうためのサロンが開催されるなどしています。
実際、日本から海外への日本酒輸出量はアメリカ、韓国を中心に多くの国で輸出量が増え続け、総輸出量では平成18年の10,269キロリットルから平成23年には14,014キロリットルにまで約40%と大幅に伸びています(出典:財務省「日本貿易統計」)
同じ醸造酒のワインと比べると、まだまだ世界における認知度は低いですが、昨年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に「和食」が登録されたことに伴い、今後、ますます日本酒の注目度が高まると予想されています。
本書『めざせ! 日本酒の達人は』は、そんな日本酒の楽しみ方が学べるガイドブック的一冊。著者はJSA(日本ソムリエ協会)認定ソムリエ、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)認定利き酒師である山同敦子さんです。
本書は日本酒初心者でも読みやすいよう、"基礎知識"をしっかりとカバー。例えば、日本酒の味を表現する際に使われる「甘い」、「辛い」とは一体どういうことなのか、というお話。さらに、「吟醸」、「大吟醸」などの専門用語の説明。加えて、よりお酒を美味しく味わうための食事であったり、飲む順番、具体的な飲み方など、微に入り細にわたり解説されています。
日本酒業界は海外の日本酒ブームに乗じて、日本でも"復権"を目指し、「日本酒で乾杯キャンペーン」や日本各地で頻繁に日本酒イベントを開催するなど、様々な仕掛けや施策を講じています。日本の良いものをしっかり評価しようという「日本人による日本ブーム」が、お酒の世界にもやってくるのでしょうか。今後の展開が気になります。