公明党と創価学会の深い関係に切り込んだ大下英治さんの大作(たいさく)
- 『公明党の深層 (イースト新書)』
- 大下英治
- イースト・プレス
- 980円(税込)
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連立与党の公明党といえば、支持団体である創価学会との関係を思い浮かべる人が多いかもしれません。憲法では、信教の自由を保障することを目的として、政治と宗教は分けるべきとする「政教分離」が定められていますが、内閣法制局は「宗教団体の政治活動を排除する規定ではない」と、公明党の政治活動を認める見解を示しています。また、かつては自民党議員から「政教一致だ」と批判する声もありましたが、連立を組む今となってはそれも昔の話となっていました。
ところが、最近の集団的自衛権容認をめぐる議論で、再び公明党と創価学会の関係を指摘する声が挙がりました。それも、政府の内側からです。
「もし内閣が法制局の答弁を一気に変えた場合、『政教一致』が出てきてもおかしくない」
この発言は飯島勲内閣官房参与によるもの。安倍首相を支える飯島参与は、集団的自衛権容認に慎重姿勢を示す公明党へのけん制として、こう発言したと見られています。しかし、作家・大下英治さんが6月に上梓した『公明党の深層』には、飯島参与が小泉純一郎元首相の秘書官であったころの"ある発言"を紹介しています。
「矢野氏を国会に招くことには強い疑問を感じる。民事訴訟の片方の当事者が国会で証言を求めることは単に政治を利用した訴訟戦術のように見えるのだ」
矢野氏というのは元公明党委員長で同党・創価学会に対して批判的な言論を展開していた矢野絢也氏のこと。創価学会は矢野氏の言論活動で名誉を毀損されたとして裁判を起こしており、一方で野党の民主党や国民新党は矢野氏を国会に喚問し、自公連立政権に揺さぶりをかけようとしていました。そんななかで当時の飯島秘書官は、公明党の立場を擁護しようとしていたのです。
どちらの発言も、政策をゴリ押しするためであったり、政権の維持を図るための"ポジショントーク"だと思えば、それまでですが、やはり釈然としません。
我々、有権者としては、そうした発言の矛盾点を次の選挙の「判断材料」のひとつにする必要があります。また、そもそもの話として、一政党としての公明党について知ることも必要でしょう。
同書では、野党、そして与党として公明党が果たした実績を好意的に取り上げる一方、市川雄一元議員が若いころ彼女を折伏(宗教の教えを伝える、転じて、創価学会に勧誘する意味も持つ)しようとして別れてしまったり、太田昭宏国土交通省や井上義久幹事長が学生時代に池田大作名誉会長から言葉を掛けられ感激したことなど、興味深いエピソードも多数掲載されています。
全390ページ、読み応えのある大作ノンフィクション。 今年11月に結党50周年の節目を迎える、公明党の深層とは? 気になる方は是非、覗いてみてはいかがでしょうか。