映画『風立ちぬ』 庵野秀明起用の理由は「ボソッと喋るから」

半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫)
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 日本を代表するアニメーション監督、宮崎駿さんが監督を引退することを、スタジオジブリが発表しました。宮崎監督は今月6日に東京都内で記者会見をして、引退の理由などを語るということです。

 そんな『風立ちぬ』では、『エヴァンゲリオン』シリーズで知られる映画監督でアニメーターの庵野秀明さんが、主人公である堀越二郎役の声優を担当しています。日本を代表するアニメ監督の庵野さんと宮崎さんですが、実は師弟関係。庵野さんは『風の谷のナウシカ』では巨神兵登場シーンの原画を担当し、宮崎さんから叱咤激励を受けたこともあったのだとか。

 アニメ制作に長く携わってきた庵野さんですが、声優としては素人。なぜ宮崎監督は、わざわざ素人の庵野さんを声優に起用したのでしょうか。その理由を、作家・半藤一利さんとの対談本『半藤一利と宮崎駿の腰抜け愛国談義』では、次のように話しています。

「堀越二郎はよくしゃべる人間ではないですから、そうすると、やっぱり存在感が大事なんです。思い入れたっぷりに演技されるよりも、ボソッとしゃべってくれたほうがいいんですよね。それで、庵野がいい、と」

 『風立ちぬ』の主人公、堀越二郎は実在した人物。第二次世界大戦期の代表的な戦闘機として知られている艦上戦闘機「零式」の設計主任という任務を背負い、作中では黙々と飛行機の設計に打ち込む姿が主という、寡黙な青年です。宮崎監督いわく、「いろいろなものを背負って歩いている、ギリギリのところに生きているなっていう感じ」も庵野さんと重なる部分があるようです。

 ジブリが声優経験のない俳優や素人を起用することについては、新作公開の度に賛否両論の声が挙がります。しかし、宮崎監督は「存在感のありなしが問題ですね」、「実生活で存在感のある人間のほうがいい声を出すんです。たとえ下手でも」と、自らの強いこだわりであることを語っています。

 宮崎監督の引退作品として話題を集め続けている『風立ちぬ』。ストーリーや映像はもちろんですが、細部までこだわりぬいたセリフの数々にも注目です。

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