プロレス原点回帰を目指した初期「無我」と相通じる伝統派ゾンビ映画『ゾンビ大陸 アフリカン』
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『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以来、量産され続けている近代ゾンビ映画。ただ、"動きが遅い、走らない、弱点は頭"といったジョージ・A・ロメロ型「伝統派ゾンビ」の様式美から外れた表現で新しさや怖さを引き出そうとする向きも多く、低予算映画界隈では、ホラーという名のメタコメディを狙っているようなケースもありました。
ところが2010年開始の海外ドラマ『ウォーキング・デッド(TWD)』が伝統派ゾンビのテンプレを守りつつ、シリアスなゾンビモノとして成功。映画界にも"原点回帰"的な空気が波及したのか、2012年にアフリカを舞台にした『ゾンビ大陸 アフリカン』が登場しました。東○○和風の邦題でいかにもアレですけど、こうみえて伝統派ゾンビ映画なのです。
アフリカ某所でゾンビが発生し、駐留米軍も撤退するも、最後の輸送機は燃料不足で墜落。唯一生き残った整備士マーフィー中尉は、妻子の生存を信じて右も左も分からない荒野からの脱出を図る......
次々とゾンビが現れるアフリカの荒野で、主人公は銃や水などの装備を集めてサバイバルを開始。途中で(平時なら敵である)現地の兵士ダニエルに助けられ、彼の息子(劇中冒頭の白服の少年)を探す流れとなります。
ほぼ全篇アフリカでのロケとあって、最小限の小道具と、あとはゾンビなアフリカンといった、低予算を逆手に取った作風ながらも、肝心のゾンビメイクや肉片などゴア表現は上々。そこに来てゾンビはロメロ型テンプレを忠実に守った伝統派!
走ってこないので昼間の荒野では大した相手ではなく、車で無造作に轢き殺せるけど、街や建物内、夜の帳では脅威になるというメリハリが感じ取れるのも伝統派だからこそでしょう。ゾンビに囲まれる中、修理した車のエンジンが掛からないというベタ展開などあっても、笑いに逃げるようなこともナシ。徹底して真面目な"これぞ伝統派ゾンビ映画"といえる内容になっています。
一方、プロレス界の"原点回帰"ムーブメントとして特に記憶されているのが、先日WWEの殿堂入りで話題になった藤波辰爾が、伝統的プロレスリング復興を掲げて1995年に旗揚げした『無我』。
当時、デスマッチや団体対抗戦の乱発など話題性偏重のプロレス界に対するアンチテーゼとして誕生しただけあり、旗揚げ戦は、藤波ほかベテラン選手の試合以外は、近代プロレスの源流のひとつとされるランカシャースタイルを広めた名門ジム「ビル・ライリー・ジム」出身の無名選手同士のデビュー戦という飾りっけゼロのカード。
内容も飛び技も無し、最小限のロープワークのみで、首や腕の取り合い、フォールの奪い合いという、20年前ですらクラシカルな"これぞプロレスリング"という試合が展開されたのでした(※)。
話を戻し、ロメロ由来の伝統派ゾンビ映画として楽しめる本作。マーフィーやダニエルの性格付けも女々しさ皆無のハードボイルド風味で、熱い漢のバディ・ムービーな味わいもあるかも。尚、インドを舞台にした『ザ・デッド:インディア』も製作されており(日本では限定公開のみ)、日本でのリリースが待たれるところであります。
(文/シングウヤスアキ)
※ こうしたレスリングスタイルは2015年現在のプロレス界では絶滅危惧種ながら、元WWEのTAKAみちのくが自身の団体「K-DOJO」の興行で弟子たち相手に披露しています。