"スポンサー名だらけのリング"的な大人の事情がほとばしるヴァン・ダム作品『ダブルチーム』
- 『ダブルチーム [DVD]』
- ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
- 1,523円(税込)
- >> Amazon.co.jp
プロレスを含め、現代のプロスポーツ(興行)にはスポンサーの存在が欠かせません。映画でも劇中に実在の企業名の入った何かが出てくるシーンがありますよね。
作品によっては"目立ち過ぎな例"もままあるんですが、そんな作品のひとつが、ワイヤーアクションのパイオニア、ツイ・ハークのハリウッド監督デビュー作『ダブルチーム』(1997)。主演はジャン=クロード・ヴァン・ダム。プロレス進出(WCWほか)も果たしたNBAの問題児、デニス・ロッドマンの映画デビュー作でもあります。
──凶悪テロリスト・スタヴロス暗殺任務のため、一時的に現場復帰した元CIA諜報員ジャック。ところが狙撃直前にスタヴロスの息子を見て躊躇したことで作戦は失敗。銃撃戦の末、スタヴロスは妻子を失いながらも逃走し、瀕死の重傷を負ったジャックも秘密の隔離施設送りになってしまう。
そこは密かに世界中のテロを予防分析する施設でもあったが、テロ活動を再開したスタヴロスがジャックの身重の妻を人質に取ったことが明らかに。妻を救うべく施設を脱出したジャックは、武器商人ヤズ(ロッドマン)の協力を得て、スタヴロスが仕掛ける死のゲームに挑む!──
因縁づくりの前半に続き、ヴァン・ダム先生が謎トレーニングで瀕死の身体を回復させつつ、絶海の孤島から脱出するまでが中盤。脱出後はロッドマンが相棒となり、ローマでの追跡・決戦(爆破アリ)という構成。
スパイ映画感とワイヤーアクションは控えめですが、安心のヴァンダミング・アクションと、ロッドマンの(シーン毎に違う)珍妙ヘアカラー&ヘンタイ衣装がダブルで楽しめるのは本作だけ!
そして今回のいじりどころです。前半の遊園地のシーンに早速出てくるのが某飲料の自販機。中盤の脱出シーンには製品そのものが使われ、クライマックスでの自販機祭り&自販機バリアーにより、「本作の主役は○○・○ー○」という揶揄があながち間違いでもないレベルに仕上がっています。
さらにサングラス、高級腕時計、携帯電話などの企業名もしっかり映ってるじゃないですか。その辺りを意識して観ると、大人の事情が猛烈に感じられるハズ。
これをプロレス界に当てはめれば、リングのマットに描かれたスポンサー企業名や製品名。しかも複数企業が相乗りしまくって、マットだけでなく四方のエプロン、コーナーポストにまでプリントされているような状態でしょう。
尚、ロッドマンは1997年度の第18回ラジー賞の最低助演男優賞と最低新人賞、ヴァン・ダムとのコンビで最低スクリーンカップル賞も獲得しましたが、敵役スタヴロスを演じたミッキー・ロークもなかなか。
大物感を漂わせまくったくせに、最終決戦では上半身素っ裸でマッチョボディを露わにするけど、ほぼタコ殴りにされるだけで、最後には泣き顔でフィニッシュ。ジャックの嫁の出産をしっかりサポートしちゃう辺りとかも含めて、他に類を見ないジョバー(負け役)なボスキャラとして記憶して然るべきなのです!
(文/シングウヤスアキ)