"アートの価値観"を揺さぶる事件の裏側『バンクシー 抗うものたちのアート革命』
2018年、アート界に大きな衝撃を与えた事件がありました。それは英競売大手ザザビーズにて覆面アーティストバンクシーによる作品「風船と少女」が約100万ドルで落札された瞬間、額縁の下部に隠されていたシュレッダーを通過し引き裂かれたというもの。その後、「愛はゴミ箱の中に」という名に変わったこの作品は、新たに約1600万ドルで落札され、注目を浴びました。引き裂かれたアートのほうが価値を増すという、常識では考えられない現象。なぜそんなことが起きたのか。その答えを探るためには、バンクシーがどのように現在のスタイルを確立し、政治的視点をアートに取り入れていったのか知る必要があります。そこで手がかりとなったのが、2023年に日本公開されたドキュメンタリー映画『バンクシー 抗うものたちのアート革命』。この一本を観て、彼のアートをより深く理解できたと感じました。
今や世界中で知られる覆面アーティスト・バンクシー。イギリスを拠点に、政治的・社会的メッセージを込めた作品を街角に突然出現させるスタイルで知られています。では、そんなバンクシーの原点には何があったのか?本作では、20年以上にわたる活動を知る身近な人物たちへのインタビューを通して、バンクシーのアートを深掘りしていきます。彼がグラフィティアートからキャリアをスタートし、どのような経緯でステンシルアートへ移行したのか。また、豚や象といった動物にアートを施す大胆な展示会の裏側のエピソードも収録されています。
そして注目したいのが、バンクシーが口元を隠して映る過去のインタビュー動画。彼の肉声を聞くこともできるし、彼のアートに対しての考え方なども紹介されています。「アートには何に対して価値がつくのか?」アーティスト自身なのか、作品そのものか、あるいはメッセージ性なのか。観終わったあと、アートの価値そのものについて深く考えさせられる一本でした。さらに、本作ではバンクシーと共に活動してきたアーティストたちも紹介されていて、美術館を巡っているような感覚で楽しめる点も魅力の一つです。
(文/トキエス)

