映画『ベニスに死す』の監督は、名門貴族出身だった?

時代を動かした世界の「名家・大富豪」: 王家・財界・政界・文化、そして闇の「名門」 (知的生きかた文庫)
『時代を動かした世界の「名家・大富豪」: 王家・財界・政界・文化、そして闇の「名門」 (知的生きかた文庫)』
「大人のための歴史」研究会
三笠書房
637円(税込)
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 ハプスブルク家、ブルボン家、ロマノフ家、オスマン家、チューダー家といった王家の数々。ロスチャイルド家、ロックフェラー家、モルガン家、フォード家、李家をはじめとする経済・財界の富豪一族。ケネディ家、ブッシュ家、サウド家などの政界の名家。そしてメディチ家、ブリューゲル家、バッハ家といった文化・芸術界の名門―世界には名家・名門といわれる、時代をも動かす強力な力を持った家系が存在します。

 本書『時代を動かした 世界の「名家・大富豪」』では、こうした世界の数々の大富豪、名門一族に注目。お金・地位を持ち得た理由やその歴史、現状を含めた概略を解説していきます。

 たとえば『夏の嵐』『若者のすべて』『地獄に堕ちた勇者ども』『ベニスに死す』『ルードウィヒ/神々の黄昏』などの作品で知られる、イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティ。

 彼の出自であるヴィスコンティ家は、イタリア・ミラノの名門貴族であり、ヨーロッパの文化・芸術事業に貢献してきた歴史を持つといいます。もともと地方の豪族にすぎなかったヴィスコンティ家が台頭するきっかけは、13世紀にオットーネ・ヴィスコンティがミラノ大司教に任命されたこと。その際、これに反発したライバルのトッレ家を滅ぼし、ミラノの実権を奪取。そこから名家への階段を昇っていき、14世紀にはジェノヴァやボローニャといったイタリアの大都市を治め、さらにはヨーロッパ各国の王家と婚姻関係を結ぶことで勢力を拡大していきました。

 そして1395年、当主のジャン・ガレアッツォが神聖ローマ帝国の皇帝からミラノ公の称号を得ると、ヴィスコンティ家は最盛期を迎えます。このジャン・ガレアッツォは、圧倒的な資金力を背景にさまざまな文化・芸術事業を行い、イタリア最大のゴシック建築として名高いミラノ大聖堂(ドゥオーモ)やスフォルツェスコ城、サルトゥジオ会修道院を建設。彼の活動により、ミラノでは華やかな文化が創出されたのだといいます。

 映画監督であるルキノは、一族繁栄のきっかけとなったオットーネから数えて17代目の子孫なのだそうです。

「ヴィスコンティ家では、芸術や文化活動が趣味やたしなみ以上のものとされていたというから、ルキノはなるべくして映画監督になったともいえるだろう」(本書より)

 華麗なる一族であるがゆえ、権力やお金を巡って、ときに起こる暗殺をはじめとした悲劇。さまざまなドラマが渦巻く波瀾万丈な歴史。思わずさらに調べてみたくなるきっかけを与えてくれる一冊です。

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