東京で「映画とコーヒーのある1日」を過ごす
- 『東京映画館 映画とコーヒーのある1日 (キネマ旬報ムック)』
- キネマ旬報社
- 1,350円(税込)
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最新の設備が整った映画館からミニシアターまで、街中にある個性豊かな映画館の数々。
たとえば、渋谷の街を見渡しただけでも、ユーロスペース、Bunkamuraル・シネマ、シネマヴェーラ渋谷、シネマライズ、シネクイント、シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ渋谷、渋谷アップリンク、渋谷TOEI、TOHOシネマズ渋谷、渋谷シネパレス1・2、渋谷HUMAXシネマ......と、それぞれに独自性のある映画館が数多く存在しています。
本書『東京映画館』では、東京の街----渋谷・恵比寿、新宿・早稲田、銀座・日本橋・京橋、神保町・飯田橋、池袋など----にある、こうした映画館に焦点を当て、それぞれの特徴を紹介。
さらには、映画の前に、そして観終わったあとに是非とも立ち寄りたい、オススメのカフェも紹介していきます。
また「わたしの、映画とコーヒーのある1日」と題されたコーナでは、映画監督やミュージシャン、俳優たちが、自身のお気に入りの映画館、思い出の作品とその作品にまつわるエピソード、理想とする「映画とコーヒーのある1日」の過ごし方について、コメントを寄せています。
たとえば、ミュージシャンである曽我部恵一さんお気に入りの映画館は「下高井戸シネマ」。曽我部さんは、その思い出を次のように記しています。
「20代の長い期間住んでいたアパートからすぐ近くにあり、時折ふと思い立ってはふらりと足を向けました。独り身の、時間だけがたっぷりある時代の甘い思い出です」(本書より)
下高井戸シネマは、1階が美容室や歯科医院、3階以上がマンションという複合ビルの2階にある、座数126のミニシアター。洋画を中心に幅広いラインナップで客層を広げてきたという下高井戸シネマですが、その歩みのなかでは幾度かの閉館危機もあったといいます。
「1950年代に東映映画の封切館としてスタートし、京王電鉄グループの直営映画館となったのは1987年。その後、日本ヘラルド映画グループへ経営権が移動した。1998年、3番目の事業主が撤退を発表。この最大のピンチを救ったのは、二人のヘラルド社員だった。地元商店街の強力な後押しもあり、二人は独立して同館の経営に乗り出した」(本書より)
こうした閉館危機を乗り越えながら運営される下高井戸シネマでは、さまざまな志向の人に来てもらえるよう、プログラム作りにおいても工夫を凝らしているそうです。
一人で気楽に、あるいは友だちや恋人と、気になる映画館を訪れて作品を鑑賞し、カフェに立ち寄って余韻に浸る......本書は、そうした至福の時間への手助けをしてくれるのではないでしょうか。