作家・林真理子を支えた強靭な「野心」と「妄想力」とは
- 『野心のすすめ (講談社現代新書)』
- 林 真理子
- 講談社
- 799円(税込)
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先週金曜日放送の人気バラエティ番組「中居正広の金曜日のスマたちへ」(TBS)に、作家の林真理子さんが登場しました。林さんと言えば、直木賞に柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞といった出版界の賞を総なめにした女流作家。デビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』などのエッセイでも人気を誇る林さんですが、今年4月に発売となった『野心のすすめ』も25万部を超えるヒット作となっています。
自らの私生活をつづった『ルンルンを〜』で時代の寵児となった林さんは、ブレイク前に相当な苦労を味わいました。学生時代のいじめ、40社以上に応募して全て不採用となった就職活動、食パンだけを食べていた貧乏生活などの様子が『金スマ』では再現ドラマとして紹介されました。
ひときわ目立っていたのが、『野心のすすめ』でも語られているこんなエピソードです。
「貰った四十通以上の不採用通知の束をリボンで結んで、宝物にしていたんです」
「近い将来、私のところへ取材に来た出版社の人に手紙の束を見せながら、『あなたがいる会社も含めて就職試験、全部落っこちちゃってー』と笑って話せる日が来るだろうと信じていた」
この強靭な「妄想力」が林さんの野心を形づくっています。男子にいじめられれば「きっと私のことが好きなんだ」と思い込み、処女作の執筆中には「今年の紅白歌合戦の審査員をやることになったらどうしよう」と夢想するなど、この類まれな妄想力は人生の様々な局面で、林さんを後押しします。
また『金スマ』では安住アナウンサーに「5秒に1回自慢しますね!」と指摘された林さん。これまでも「野心」を「自慢」と捉えられ、たびたび激しいバッシングを受けたそうです。
「世間で『野心』といえば、腹黒かったり身の程知らずであつかましいイメージが先行していますよね。『野心家』となると、もうほとんど悪人扱いです」
林さんが、悪しきイメージが広がるリスクを背負ってまで『野心のすすめ』を行う理由は何なのでしょうか。
「平地で遊んでいる人間には一生見えない美しい景色、野心を持って努力した人間だけが知る幸福がそこにはあります」
「自分が、過去にたくさん失敗したり、試行錯誤して生きてきたからこそ学んだことをお伝えしたい」
『金スマ』の番組ブログは、番組収録後のスタジオの様子を「赤100人の女性が林先生に心を奪われ野心の塊になっていました」と振り返っています。「野心を持って進んだからこその幸福をみんなに味わってほしい」という林さんの思いは、「低め安定」を求めがちな現代人の心に確かに響いているのかもしれません。