食欲の暴走、スマホ依存、陰謀論...... 生命科学者が解説する"本能と現代のズレ"

思いどおりにならない人生を変える生命科学 すべて本能のせい科学的に正しい脳との付き合いかた
『思いどおりにならない人生を変える生命科学 すべて本能のせい科学的に正しい脳との付き合いかた』
高橋 祥子
ダイヤモンド社
1,760円(税込)
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 私たちの毎日には、思い通りにならないことがあふれています。ダイエット中のはずなのに食べ過ぎてしまう、早く寝なきゃいけないのにスマホをだらだらと見てしまう。はたまた、つい感情的になってしまったり先延ばし癖が出たりして、「自分ってなんでこうなんだろう?」と落ち込む人もいるかもしれません。

 これらの原因はすべて、自分の「意志が弱いから」「努力が足りないから」なのでしょうか。

 「本当に問題なのは本能的な仕組みそのものではなく、その仕組みと、私たちが置かれている現代環境のミスマッチのせい」だと言うのは、生命科学者の高橋祥子さん。「生存を優先する」という仕組みは人間の進化の上では合理的であったものの、その仕組みが現代の環境においてはバグとなってしまうことがあるといいます。

 高橋さんの著書『思いどおりにならない人生を変える生命科学 すべて本能のせい科学的に正しい脳との付き合いかた』は、人間の仕組みと、その中に組み込まれた「間違える構造」について生命科学の視点から紐解き、こうした本能とどのように付き合っていけばよいかを明かした一冊です。

 たとえば、「痩せたいのについ食べ過ぎてしまう」「医師にダメだと言われているのに甘いものや脂っこいものがやめられない」という経験はありませんか。私たちの身体と脳は、長い進化の歴史の中では、健康そのものではなく、生き残り、子孫を残すことに有利な方向に最適化されてきました。そのため、「『高カロリーのものをたくさん食べてエネルギーを溜める』というメカニズムは、脳内の報酬系、特にドーパミンによって強化されて」(本書より)いるといいます。

 さらに、本来は希少だった「強いご褒美」を、今では私たちは日常的に味わうことができます。かつて生存に有利だった「見つけたら食べる」「できるだけ多く蓄える」という本能が、現代では行き過ぎた形で暴走し、結果的に健康を害してしまうこともあるというわけです。

 それでは、こうした「バグ」に私たちはどう対処すればよいのでしょうか。食事に関して言えば、「高カロリーな食べ物を手元に置かない」「視界に入る食べ物の種類を変える」など、食べ過ぎにつながる刺激に「日常的にさらされにくい食環境を工夫する」だけでも効果はあるといいます。必要なのは「自分の意思を強くすること」ではありません。「自分がどのように反応してしまうかを理解したうえで、その反応が行き過ぎないよう生活を整えること」(本書より)です。

これは食べ物に限ったものではなく、スマホ依存や陰謀論、承認欲求、ルッキズム、不安などにも通じる話です。私たちが思い通りにならないと感じる行動の背景に、人間に備わった仕組みがあることを理解した上で、「脳が反応する環境を設計する」(本書より)ことが大切だといいます。

 私たちが普段困難に感じていることを、「意志の弱さ」だけで片付けず、「脳の仕組み」としてまずは捉えてみる。その上で、自分が望む行動を取りやすい環境を意識的に作るようにする。それこそが、「進化のバグ」への正しい対処法と言えそうです。皆さんも本書で本能との付き合い方を学んでみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]

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