芸人を辞めた19人の現在 野々村友紀子らが明かした本音

- 『芸人廃業 ダウンタウンになれなかった者たちの航海と後悔』
- 藤井ペイジ(飛石連休)
- 鉄人社
- 1,980円(税込)

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現在、日本にはいったい何人のお笑い芸人がいるのでしょうか。漫才日本一を決める「M-1グランプリ」の2025年大会には、1万1521組がエントリーしたそうですが、そこに参加しない芸人も含めたら膨大な数になります。しかし、この中からメジャーな存在になれるのはほんのひと握り。非常にシビアな世界であり、ほとんどは成功することなく道半ばで去っていくのが現実です。
そんな「お笑いの世界を辞めた芸人」に話を聞くという企画を、YouTubeチャンネル「ペイジちゃんねる」でおこなっているのが、お笑いコンビ「飛石連休」の藤井ペイジさん。『芸人廃業 ダウンタウンになれなかった者たちの航海と後悔』は、同チャンネルの動画をもとに、お笑いの世界を"廃業"することを選んだ19人のリアルな人生とセカンドキャリアについてまとめたインタビュー本です。
たとえば、最初に登場するのは、バラエティ番組などでもおなじみの放送作家・タレント、野々村友紀子さん。吉本総合芸能学院(NSC)大阪校の11期生で、かつては将来を有望視されたお笑いコンビの一人でした。野々村さんは当時について「基本的なことが足りていなかった」とのこと。
「『いっこいっこ命懸け』じゃないけど、『この1回の会議、1回の場が将来を分ける』っていうことに、もっと早く気づけてたらなあって、いまは思う」(本書より)
これは、芸人としての"覚悟"のことだと言えるでしょう。「アームストロング」のくりさんは「やっぱり『覚悟』ってすごく大事だと思います。それをもっと若いうちに気づけたら、もうちょっと何かが変わってたんだろうなって」(本書より)、「カリカ」のマンボウやしろさんは「芸人の肩書って『覚悟』だと思います。自分が芸人を名乗って生きてるときと、肩書を降ろしたいまでは、生活する上での選択の基準もぜんぜん違います」(本書より)、山田能龍さんは「『売れる』って、『運』とか『誰かに見つけてもらう巡り合わせ』とか、いろいろあると思うんですけど、とにかく『グッ!』と力を入れて本気でやることじゃないですかね」(本書より)と語っています。
興味深いのは、「生まれ変わったらまた芸人をやりますか?」との藤井さんの質問に、多くの人が「ノー」と答えていることです。この回答からは、好きという気持ちだけでは続けられない芸人という仕事の厳しさが伝わってきます。
なお、マンボウやしろさんは2016年に芸人を引退していましたが、2026年3月、元相方の林よしはるさんと「ニューカリカ」として「キングオブコント2026」に出場する意向を示し、芸人復帰を表明しました。
藤井さんはエピローグで以下のようにつづります。
「夢叶わずとも『芸人人生は無駄ではなかった』と胸を張る人たちに勇気をもらえた一方で、お笑い芸人でいられること、コンビでいられることは当たり前ではないということを、このインタビュー企画を始めて身に染みて感じました」(本書より)
大きな夢に人生を賭けて挑み、当たって砕けた者たちが新たな道を見つけて、力強く歩んでいく。そんな再生ドキュメンタリーは、きっと皆さんの胸に響くはずです。
[文・鷺ノ宮やよい]
