お風呂、料理、片づけがしんどい...... ADHD当事者が伝える、「できない」を分解する暮らしのヒント

- 『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』
- なちゅ。,本田秀夫(医療監修)
- ダイヤモンド社
- 1,870円(税込)

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ADHDとは、不注意や多動性、衝動性といった特徴が見られる発達障害のこと。ADHDのある人の中には、「なぜ自分はみんなと同じようにできないんだろう?」と生きづらさを感じている人もいるかもしれません。女の子の場合は、「身だしなみをちゃんとしなさい」「料理上手になりなさい」「人間関係では空気を読みなさい」など、性別による役割や振る舞いを求められることがいまだにあります。
なんとも生きづらい世の中で、どうすればラクに生きられるようになるのでしょうか。今回紹介する書籍『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』は、自身もADHDである「なちゅ。」さんが、多くの失敗の中から見つけた「この世の暗黙のルール」をもとに、ADHDのある女の子が生存する方法を解説した戦略書です。
本書にはさまざまな具体策やアイテムが出てきますが、「一番持ち帰ってほしいのは、個々のテクニックではなく、その裏側にある『考え方』のほう」(本書より)だという、「なちゅ。」さん。その柱の一つとなるのが、「なちゅ。」さんが名付けた「構造化サイクル」というものです。物事の構造には必ず仕組みがあり、その仕組みを見て、記録して、分析して、自分に合わせて組み直すことで、生きやすく感じられる場合があるそうです。
たとえば、本書によるとADHD界隈にはおなじみだという「風呂キャンセル問題」。風呂に入るという行動を分析してみると、頭を洗って、体を洗って、湯船につかって、出て、体を拭いて、髪を乾かして、スキンケアをして......と、意外と多くのタスクがあることが分かります。そのため、風呂キャンの要因の一つに「複数のタスクを処理するのが苦手」というADHDの特性が関わっていると考えられそうです。
そうであれば、「服を脱ぐのがめんどくさい→帰宅した瞬間、そのまま全裸になってシャワーへ」「頭を洗うのがめんどくさい→シャンプー&リンス一体型を使う」など、タスクを最小限に減らせれば、キャンセル率が下がるかもしれません。
このように、「タスクを最大限簡略化する」というのは、本書で提案される重要なライフハック。「ラクをするな」「手を抜くな」と教わってきた人も多いかもしれませんが、「なちゅ。」さんが大切にするのは「ていねいさ」とは少し異なる「効率」というものさしです。本書が目指す「生きやすさ」とは、「単純に自分がラクになること」であり、それは「一番手数の少ない道を探し、生活の効率化をはかる」という生存戦略でもあるのです。
身だしなみやマナー、料理や片づけ、体やメンタルの保ち方、人間関係、毒親との付き合い方など、ADHDのある人が抱える困り事とその対策を幅広く取り上げている本書。ADHDと診断されているかどうかにかかわらず、また、性別や年齢を問わず、生きづらさを抱えている人にとっては参考になる部分もあるのではないでしょうか。
世の中にある暗黙のルールを把握し、歩み寄れるところは歩み寄る。けれど守るべきラインは死守して自分に合ったやり方を大事にする――本書は皆さんにとって、そんな落としどころを見つける道しるべとなってくれるでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]