&Q

著者:
編集長:酒井若菜他
価格:
500円/月 (税込)
発行:
ほぼ毎週日曜日配信(月4回)
最新発行日:
2024年02月25日(日)

女優の酒井若菜が編集長となり、新たに創刊するWEBマガジン『&Q』。

配信コンテンツは、テキストや画像はもちろん、今後は音声や映像コンテンツの配信も予定。

ほぼ毎週日曜日の配信で、メールテキスト版・HTML版で配信します。

是非、「&Q」の世界を覗いてみてください。

バックナンバー

プロフィール

編集長:酒井若菜他

【著者名】
土岐麻子 『シティ・ライツ・セレナーデ』
西原亜希 『へその形が戻らない』
佐津川愛美 『結局、自分が主人公。』
坂本美雨 『すきまに名前をつけながら』
西田尚美 『気まぐれ自由帖』
酒井若菜 『Blue』
(以上 掲載順)


特別公開【序文】

まず、日本で活躍するエッセイストをざっと10人ほど、思い浮かべてみてください。

*****

思い浮かべてくださいましたか?
その中に、エッセイを書くことだけを生業としているかたが何人いましたか?
生え抜きのエッセイストが何人いましたか?
思い浮かべたエッセイストのほとんどが、本業を持っていませんでしたか?
あるいは、そのほとんどが、エッセイストと“なにか”の二足のわらじを履いていませんでしたか?
「エッセイの名手」と呼ばれる、私が最も敬愛している作家、向田邦子さんですら、本業は脚本家なのです。
読書好きなら誰もが思い浮かべたであろう、さくらももこさんもそうです。国民的スターちびまる子ちゃんの本名はさくらももこですから。
エッセイストからスタートしたかたも、メディアに出るようになるかたが多いです。
つまりエッセイストたちのほとんどは(全員では勿論ありませんが)、ご本人そのものがタレント性を持っているのです。
だからこそ、「どうせタレントさんの書く文章でしょ?」なんてフレーズはいい加減に諦めなさい、と私は言いたい。
テレビがなかった時代、作家は今でいうタレントのような存在でした。
それは、随筆家、つまりはエッセイストだけでなく、小説家でも同じでした。
「エッセイスト」とは元来、その人自身にタレント性がなければ持ち得ない肩書きなのです。

そんな経緯から、今回、この『marble』を立ち上げるにあたり、私が白羽の矢を立てたのは「本業を持つかた」でした。
そして、メルマガ業界は、男性が主体の媒体です。
個人や事務所内でメルマガを配信している女性もいますが、所属事務所の垣根を超えて一つの媒体に「女性たち」が集合するのは、この『marble』がメルマガ史上初の試みとなります。

私の著作『酒井若菜と8人の男たち』は、当初『~女たち』で構想していたものでした。
女優たちと共に一冊の本を創ろうと発案したのです。
しかし、女優には何かとややこしい事情や制限があるものです。ご本人たちではなく、取り巻く人たちでもなく、環境がそうさせてしまうのです。私自身が女優という立場であるわけですから、そのことは重々理解しております。
今回参加してくださる連載陣、そして連載陣の関係者の皆さんは、そんな意味でも「特別」なかたたちです。粋じゃあありませんか!
快諾してくださったご本人さま、関係者の皆さまに、心よりお礼申し上げます。
そして読者になってくださった皆さまへも。

さて、今回、どうしてこの連載陣にオファーをしたか。
あらためてご説明させていただきます。
それは、まず先に書いた通り、女優に関わらず、本業を持っている、ということがひとつ。
それから、『~8人の男たち』のキャスティングは「男性に好かれる男性」をテーマのひとつに据えましたが、今回も「女性に好かれる女性」をテーマにキャスティングしました。つまり、この『marble』は、言い換えれば『酒井若菜と8人の男たち』の女性版でもあるのです。
そして、「人見知りが漏れている」かたたちを中心にお声掛けしました。私は、自分も人見知りなところがあるので、人見知りな人を好む傾向があります。しかし「人見知りを振りかざして武器にしている人」はあまり好みません。武器にした途端、周りに気を使わせてしまうからです。
私は「人見知りだけど、気を使わせないように笑っている」、そんな人が好きで。人見知りを武器にしている人の気持ちを汲んで、気を使ってあげられる、そんな人が好きで。
そういう意味で言うと、今回の連載陣たちからは、「人見知りが漏れているけど、周りに気を使わせないようにがんばるぞ!」という親切な優しい人柄が垣間見えるのです。自身の人見知りによって周囲に気を使わせることよりも、人に親切にする気持ちのほうが勝った人たち、なように私の目には映るのです。
そうでなければ、連載を引き受けてくださったりなどしないでしょう。
あとは、シンプルに、私が「このかたの文章が読みたい!」と思ったかたたち。それが一番大きい理由であることは、言うまでもありません。

月二回配信されるこの『marble』が、読者の皆さまの日常に寄り添うモノになりますように。

桜梅桃李。そんな感じで。
いついかなるときも、連載陣が咲かせる6輪の花が、皆さまの生活を彩るモノになりますように。

編集長 酒井若菜



特別公開【酒井若菜による各連載陣の紹介文】

~土岐麻子さん~

いつどこで、どんな風に知り合ったのか、正直憶えていない。しかし、初めて『Gift~あなたはマドンナ~』を聴いたときの衝撃は憶えている。もしかすると、その歌が発売された時期に出逢ったのかもしれない。
確か巷では、負け犬女が遠吠えをしていたり、セクシュアルな話をグロテスクに話すことがガールズトークの実態だと設定されていたり、マウンティングという言葉が蔓延していたり、「女性の本音はロクでもない」ブームが長く続いていた頃だったと思う。
私なら「そんなロクでもない女ばっかりじゃないからね!」と直接的に否定してしまうだろう。しかし麻子さんは、いともあっさりと「あなたはマドンナ」と女性を讃えたのである。あまりにもあっさりと(あっさりと簡単に創作しているという意味ではない。むしろ悩みながら創作するかただ)、まるで最初から女たちのはしたない実態などこの世に存在していなかったかのように、あるいは全てを内包した上で、女性の魅力を歌にしてしまった。そして、そこには時代に反逆するような作為的なものが一切感じられなかった。
なんちゅう人だ!!と思った。
以降私は、土岐麻子さんの歌を聴き続けている。
おかしな言い方だが、私にとって麻子さんは、どんな精神状態でも聴けるただ一人のシンガーだ。
というのも、実は私は音楽が苦手だ。嫌いではなく、苦手。音楽過敏症といってもいい。音楽は私にとって刺激が強すぎる。受ける影響が異常なのだ。音楽を聴きながら道端で気絶をしてしまったり、痙攣を起こしたりするのだ。むしろ音楽が好きなんじゃないかと思うくらい、刺さり過ぎてしまうのだ。
しかし、麻子さんの歌だけは、どういうわけかどんな時でも聴くことができる。
時に染み入り、時に励まされ、時に共感し、時になんとなく聞き流すことさえ許してもらえる。いつだって寄り添ってくれる。

田舎生まれ、田舎育ちの私が実家から東京に戻る電車の中。私の心はいつだって暗かった。
地方出身者にはあるあるだが、いくつになろうとも、東京は「戦場」なのである。戦場に向かうときに憂鬱にならないことのほうが難しい。
だから私は、実家から東京に戻るときは特に、100%、麻子さんの歌を聴く。
東京生まれ、東京育ちの麻子さんが創る音楽は都会的だ。
麻子さんの歌を聴くと、「東京も悪くない」と思える。むしろ「早く東京に着かないかな」とすら思える。
土岐麻子さんの音楽は、魔法のようだ。
そしてどんな時も、女性の「暮らし」を豊かにしてくれる。
めちゃくちゃかっこいい。

そして、数々のCMナレーションも担当してきた麻子さん。東日本大震災が起こったとき、テレビではACジャパンのCMだけが様々なversionで流れていたが、麻子さんはその中で「今、私にできること」という一言から始まるversionのナレーションをしていた。
あのとき、温もりのある声を国民に届けていたのは、麻子さんだった。
麻子さんの声は、日本が窮地に立たされたとき、選ばれる「声」。
温もりが欲しかった私たちにとって、たしかに必要だった「声」。

以上が、私が抱く、麻子さんのアーティスト、シンガーとしての印象。
しかし、実際の麻子さんは、というと…ユーモアたっぷりで、めちゃくちゃ可愛い。
余計好きになっちゃうじゃん!
この連載では、二度と会わないけど普通に忘れちゃうのはいやだなあという“一期一会”な人とのあれこれを綴っていただけるとのこと。時に文章のみ。時に絵のみ。時に絵日記的なものを。楽しみ。

~西原亜希ちゃん~

熱烈な酒井若菜ファンであり、酒井教の信者。笑
知り合う前から、私の文章や出演作品を追いかけ続けてくれていたことは共通の知人から聞いていたが、実際の出逢いは、映画『遺体 明日への十日間』での共演。
その映画撮影を機に親交を深めるが、聞けば聞くほど、彼女ほど“一生懸命”に読書する人はいないと思う。どの本に対しても、真摯に、純粋に、誠実に、真正面から向き合う姿には、感動すら覚える。
曲がったことが大嫌い、いや、曲がることが不可能、と言ってもいいであろうその真っ直ぐな人柄は、読書スタイルにも表れるようだ。
それはもちろん日常生活や仕事、人付き合いにおいても同様で、真っ直ぐすぎて、「そこ壁です、壁」という難所にもベッシベシぶち当たっている姿をよく見かける。笑
「そこ壁ですよ~。こっちに抜け道ありますよ~」と言わない限り、どんなに弾き飛ばされても体当たりを繰り返す。もはや、勇ましい。
童話『大きなかぶ』で言うならば、一番最初にかぶを引っこ抜こうとしていたおじいさん。あんまり一生懸命だから、気づけば周りにはたくさんの仲間がいる。そんな吸引力のある女性だ。
明るくて素直で、ズルができない。曲がれない。こんなにひねくれていない人は他にいない。
知人友人は、口を揃えて彼女のことをこう評する。「太陽みたい」。

文章を読むことだけではなく、書くこともしてみたい、という彼女の募る想いを、この『marble』で叶えることができるのなら、私は嬉しい。
正直なところ、この『marble』を立ち上げた理由のひとつは、可愛い妹分であり大切な友人でもある「亜希ちゃんの夢を叶えたい」だったから。
女優であり、一児の母ちゃんでもある彼女には、この連載で、「そこ壁です、壁」にぶつかっていくさま、大きなかぶを引っこ抜こうと奮闘するさま、太陽のように煌めくさま、具体的には、演技や子育てについてはもちろん、食育、チャイルドセラピー、などの専門的な知識も豊富なので、ぜひ披露してもらえればと思う。
と、エッセイを書いてくれるものだと思い込み、2人で散々練って『へその形が戻らない』というユルさとキレ味を兼ね備えた連載タイトルにしたのだが、もし小説を書きたいのだとしたらこのタイトルは完全に間違えてるぞ笑、とふと思い、あらためて書きたいことを彼女に聞いてみたら、以下の返答が届いた。
「今、書きたいことは主に酒井さんのことと笑、親と子のこと」。
え?主に酒井さんのこと、って言った?笑
彼女には「酒井スイッチ」というものが体内に備わっているらしく、そのスイッチを押したが最後、凄まじい熱量で、永遠に私について話し続ける。本人を前に。笑 ね。真っ直ぐ。そういえば、かつて彼女は「究極を言えば、まるごと酒井若菜が好き」と言っていたこともあった。油断していると、この連載タイトルが『へその形が戻らない』から『酒井スイッチが止まらない』に変更されたり、コンビニのスイーツコーナーに『まるごと酒井若菜』という商品が売り出される危険性もある。
布教活動に熱心な信者だ。笑 一応書いておくが、「酒井教」なんてものは存在しませんので、くれぐれも。笑
のちのち、詩や短編小説にも挑んでいきたいという意欲もあるようなので、まずは、子育てや仕事について、時々酒井、のエッセイ。のちのちマルチ、とどんどん幅を広げていってもらえればと思う。
真っ直ぐな彼女の真っ直ぐな文章を。


~佐津川愛美ちゃん~

フジテレビNEXT『ニュース速報は流れた』の撮影で知り合う。当時、愛美はまだ20才になりたての、おとなしい少女だった。私以外は全員男性。しかも全員年上。彼女はスタジオの隅で、所在なさげに、パイプ椅子に膝を揃えてちょこんと座っていた。
絶対悩んでんじゃん!
当時から世話焼きだった私は、彼女に連絡先を渡した。間もなく届いた彼女からのメールは、清々しいほどに悩んでいた。
警戒心の強かった彼女の心は、少しずつ少しずつほどけ、撮影が終わってからも私たちは親交を深めた。
ある夜、愛美は打ち上げかなにかをしていたのだろう。某俳優から電話がきて「愛美ちゃんが、酒井若菜さんしか分かってくれない、と泣きだしちゃった」と言われ、迎えに行こうかと話したこともある。私が街中でロケをしていると、どこから情報を聞きつけたのか、ひょっこり顔を出して「ねえさんの顔を見たかったの」と言ってすぐに帰っていったこともある(悩んでいたらしい)。私の着なくなった服を彼女に貰ってもらおうと自宅に招いたら、抱き枕まで持って帰ったこともある。笑 「いや絶対要らないでしょ?」と笑う私に「ねえさんパワーの中で暮らしたいの!」と答える愛美。可愛い…。
彼女はいつも悩んでいた。そしてその都度、私を頼りにしてくれた。
今でこそ、妹のような後輩たちに恵まれている私だが、初めての妹分は、愛美かもしれない。
「ねえさん」という今では馴染みの呼称も、最初に私をそう呼んだのは彼女かもしれない。

いつだったか、愛美と渋谷を歩いていると、突然私に生き霊が憑いた。笑 すると愛美は、すぐに私の背中を叩いたり撫でたりしてくれた。そして、私は見たのである…。彼女が私の背中に触れた直後、こっそり自分の掌を確認していた姿を。笑
それは、今でこそ笑い話だが、彼女が私を信頼してくれていることが分かる象徴的なエピソードで、「怖い」と思いながらも真っ先に手を差し伸べた彼女の咄嗟の行動に、私は感動した。「あ、この子、もし私が崖から落ちそうになったら、ねえさん!と反射的に手を差し伸べる子だ」と思った。

繊細さがある一方で、あの可愛い顔立ちと声からは想像もつかないが、写真の個展を開いたり、映画の監督も務めるなど、クリエイティヴな一面もある愛美。
更に彼女は、やはりあの可愛い顔立ちと声からは想像もつかないが、驚異的な身体能力の持ち主だ。舞台でアクションをやれば、側転なのかバク転なのか早すぎてわからないくらいグルグル回るし、映画で殺陣をやればその型の美しさに圧倒される。なにせ彼女は、新体操でジュニアオリンピックに出場した経歴の持ち主なのだ。
ミス・ギャップ。
彼女が自分に自信がなくてもかまわない。私は姉として、自信を持って「この子は私の自慢の妹です」と言える。
この連載では、彼女の繊細さと芯の強さを存分に発揮していただきたい。そして、あらゆるギャップを読者の皆さんに感じていただければと思う。


~坂本美雨ちゃん~

もう10年は前だろう。どこかの呑み屋でバッタリ出会った。出会ったばかりなのに、私たちは何故か連絡先を交換した。そしてもれなく驚いた。
あれ?私たち、ほとんどアドレス一緒じゃん!
私たちは笑った。当時のアドレスの文言、数字、の羅列が全く一緒だったのだ。
こんなことあるの?と思った。
美雨ちゃんとは同い年。そして、名前まで似ている。私の本名は、酒井美幸(非公表だが)。
坂本美雨、酒井美幸
うん、似てる。
し、か、も。
私の芸名の候補は、ボーイッシュなものが有力だったが、いっちばん最初に上がった候補は、「美雨」「美宇」「未宇」「美優」だった。みう、か、みゆう、だったのだ。もしかすると、私は酒井美雨だったかもしれないのである。
坂本美雨、酒井美雨
うん、こわいよもはや。
実を言うと、呑み屋での初対面以来、美雨ちゃんと遊んだことは一度もなかった。
なので、今回『marble』の創立メンバーが全員決まった時点では、まだ美雨ちゃんに声をかけていなかった。
漠然と、のちのち女優じゃないかた、私と同世代のかた、2人をスカウトしようとは思っていたが、そんなことをぼんやりと考えていたとき「1人でその2つを兼ね備えてる子、いるじゃん!」と思いついた。それが美雨ちゃんだった。
しかし、もう何年も連絡していない。というか、遊んだこともないのに突然「一緒に仕事しよう」だなんて、失礼なのではないか、と思い倦ねた。
さらには、アーティスト同士の関係というのも私には分からない世界。まずは美雨ちゃんに声をかけていいか、麻子さんに聞いてみよう。
めっちゃ不仲だったらどうしよう笑、と本気で思いながら、恐る恐る麻子さんに聞いてみた。
「連絡先変わってるかもしれないし」「麻子さん的に複雑かもしれないし」とブツブツ言う私に、麻子さんは「美雨ちゃんとっても良いと思うよ!」「連絡先が変わってたら私繋ぐよ~」とまで言ってくれた。
二人はまさかの仲良しさんだった。
星座だ!こりゃ声をかけるっきゃないぞ!
編集者に「創刊、ちょっと待って!坂本美雨ちゃんに声をかけたい!」と訴えて、すぐさま美雨ちゃんに直談判。
すると、あっさり快諾してくれた。
なんて気持ちのいい子なんだ!!

美雨ちゃんの歌声。特に高音の伸び方は、「母性」と「孤独」という相反するものを持ち合わせているように感じられて、とても不思議で、あまりにも美しい。
そして、猫を吸っている。
私の知っている坂本美雨像はこの2つの印象が強い。
この連載を通して、私は坂本美雨という「人」を知っていきたい。
そして、初めて出逢ったあの日以来に繋がった坂本美雨という「星」と共に、星座を創っていきたい。
この連載ではエッセイを中心に、時々動画も配信してくれる模様。あの美しい歌声も聴ける日がくるかも。ステキ。

~西田尚美さん~

映画『ナヴィの恋』を観たとき、かっわいいーーーーー!!!と思った。私もうっかり真似をしてベリーショートにしたら、地獄を見た。
手足長っ!細っ!顔ちっちゃ!存在自体が洒落てる!月並みだが、そんな印象を持った。

初共演は2003年、フジテレビ『ホーム&アウェイ』。その頃の私は恥ずかしいくらいの尖りガール。NGを出すなんてもってのほかの「仕事は仕事」なサイボーグ人間で、愛嬌のカケラもない若手女優だった。一方尚美さんは、当時から自然体で、尖りガールの私にもフランクに接してくださり、それはまさに童話『北風と太陽』、そのままとも言っていいくらい、私のガッチリ着込んだ外套を脱がせてくれた先輩だった。
以降、NHK朝ドラ『マッサン』等、同じ作品に出演する機会はあったものの、なかなか会うことはできなかったが、さすがに何かでは共演していると思っていた私。2017年、テレビ東京『三匹のおっさん3~正義の味方、みたび!!~』にて再会。
「尚美さん、なんの作品でしたっけ?最後に共演したの」「若菜ちゃん、一回しか共演してないよぉ」
えっ!!初共演以降、連絡は取り合っていたため、すっかり何度も共演していたものと思ってた…。
「いやでも、尚美さん(見た目が)変わらないですね」「そうなの!全然(性格が)変わってくれないの!どうしよう!!」
私は大笑いした。

昔から、色々な人からよく言われていた。
「若菜ちゃんは、西田尚美さんを目指したら?」
いやいやムリ。あんな魅力的な女性には、私がどんなに努力をしたところで到底及ばない。
大袈裟ではなく、尚美さんを好きじゃない人を見たことがない。
俳優に最も好かれる俳優の一人だろう。
可愛くて、綺麗で、優しくて、真面目で、繊細で、面白くて、やや天然で、ファッションはもちろん、存在自体がお洒落。
しかも、その魅力の全てが極めて自然なのだ。
だから同性からも好かれるのだろう。
そして、私が思う尚美さんの一番のすごさは、以下である。
そういった魅力を持っていない女性に、「尚美さんに比べたらさ、どうせ私なんて…」と思わせないこと。
これはもう、才能としか言いようがない。
愛される理由しかない。
生粋の愛され番長。
私にはとてもじゃないけれど目指せない。
しかし、憧れるのは自由だ。憧れだけは、堂々と引き続きしていこうと思う。

このメルマガ全体のイメージソングは、土岐麻子さんの歌、『Gift~あなたはマドンナ~』だ。
私がその歌を初めて聴いたとき、真っ先に思い浮かべた女性が、西田尚美さんだった。
尚美さんには、この『marble』のマドンナとして、存在してもらえればと思う。

~自己紹介~

まず、媒体名の『marble』というタイトルからして私らしくない。今まで書いてきた文章のタイトルは全て日本語。それが私のポリシーだった。
私が書いてきた文章は全て「夜、眠れない人」「死にたい人」に向けて書いてきたものである。
それが故に、文体が硬く、内容も重たいので、私の文章に英語のタイトルは似合わないのだ。
私は、本屋に行くたびに女性タレント本のコーナーの前で溜め息をついていた。
愛用コスメ、鞄の中身、着回しテク、最後のほうに親しい人からのコメント、ラストには直筆の「ファンの皆さまへ」から始まる、実は悩んでたよ手紙。
構成おんなじじゃないか。
それが悪いとは言わない。だって、ちゃんと売れている。なんなら私も買って読んでいる。
しかし、10年後に読み返せそうな本がほとんどなかった。
そりゃ「タレントさんの文章でしょ」と言われても仕方がないが、一方で私の活字勝負の本はさほど売れない。
つまり、私の負けなのだ。
私は、女性タレント本のコーナーに一石投じるつもりで『酒井若菜と8人の男たち』という活字だらけの分厚い本を出した。
次にやることは、女性タレント本の概念をぶっ壊す、そして、タレント本の価値そのものを底上げする、だ。
あえて苦手な女性向けライトエッセイを書こう。
その上で勝つ。
そう決めた。
しかし、たぶんそれだけではもたない、私が。笑
なので、この連載では、女性向けライトエッセイと寓話を交互に書いていこうと思う。
連載タイトルも英語にしてみた。
『Blue』。私が紺色好きだったことを、いまだに覚えている人が多い。そして、青は、ネガティヴなイメージもある一方で、空や海などのポジティブなイメージもある。さらにはジョニ・ミッチェルの同名の歌をこよなく愛している。
やはり暗く重たい歌だが、私に似合う英語は、これくらいしか思いつかないのだ。
奇数号はエッセイ。偶数号は寓話。
と覚えていただけるとありがたい。
その規則を守れる自信は一切ないが、ひとつよろしくお願い致します。

(以上)

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