「団塊世代」=「集団ジャイアン」? 団塊世代が「永遠の勝ち組」なワケ

ザ、コラム
『ザ、コラム』
小田嶋隆
晶文社
1,620円(税込)
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 昨年は、老老詐欺、高齢者によるタクシー会社や鉄道会社へのクレームなど、高齢者の事件が多く話題になりました。そんな高齢者による事件のほとんどは、1947~1951年に生まれた、いわゆる「団塊世代」が中心となっています。改めて、「団塊世代」とはどのような世代だったのでしょうか。

 「団塊。英語でマス。マス・プロダクション。マス・コミュニケーション。マス・マニュピレーション。そしてマスタベーション」と著書『ザ、コラム』の中で団塊世代を揶揄(?)しているのは、彼らの後ろ姿を見てきたポスト団塊世代の小田嶋隆氏。

 「強調しておきたいのは、彼らが『多数派になった』わけではないということだ。団塊は『多いから正しいとされてきた』だけだ。このことを忘れてはならない」(本書より)

 本書によれば、団塊世代は、その市場の大きさから常にブームを起こしてきたとのこと。ロックミュージック、ダッコちゃん、フラフープ、『冬のソナタ』ヨン様関連需要など、いずれも「購買力と行動力のタマモノ」であったと小田嶋氏は述べています。

 「資本主義経済社会において、多数派である彼らは天然の絶対善であった。だからこそ、団塊の人々の政治的な志向や、文化的な好悪は、あらゆる段階で、常に全面肯定された」(本書より)

 小田嶋氏いわく、その背景には団塊世代の子供時代が大きく、「敗戦後、団塊の親や教師たち、影響力を持つオピニオンリーダーがその機能をほとんど果たしていなかった」と指摘します。

 「この教育的・思想的・文化的真空の中で、団塊は、『オレが一番』『オレらって最高』という思想を内心にすくすくと育っていった。いや、厳密に言えば、これは思想ではない。ギャングエイジの夜郎自大に過ぎない。『ジャイアニズム』ってやつだ」(本書より)

 小田嶋氏によれば、"ジャイアニズム"とは「ジャイアンが顕現する自己中心的なマッチョ思想」。つまり、「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」でおなじみの『ドラえもん』の剛田武=団塊世代といえそうです。小田嶋氏はこうも指摘します。

 「ふつうの世界では、14歳時点のオレオレ思想は、年長者にヘコまされることになっている。が、団塊の世界には、大人がいなかった。で、彼らは、集団ジャイアンとして世界デビューしたわけだ。団塊ジャイアンズ。常勝」(本書より)

 大学を解体したが再建しない、バブルの恩恵を享受、労働力では多数派、票田では主流派など、彼らが勝ち続けるこの歩みを小田嶋氏は「永遠の勝ち組」とも称しています。

 こうした団塊世代の特性から、若者をはじめ他の世代と様々なギャップが生じ、昨今の高齢者トラブルの一因となっている可能性も考えられそうです。

 本書ではほかにも、小田嶋氏がこの約10年の間に手掛けた数多くのコラムから、自らの手で選りすぐった"超偏愛的コラム"が収録されています。この10年の間に日本で起きた出来事を改めて読み返してみてはいかがでしょうか。

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