碇のむきだし

碇本学

2021年5月31日号

 『dance alone(in,out)』  音楽は鳴り止んでいた。 一瞬車輌全体が息を吐くようにフット下がってからドアが開く。渋谷駅のホームに降りる。車内は寒いぐらいに冷房が効いていたが、構内は湿気が粘りついてくるようで気が滅入る。広告看板を横目に見ながら階段を降りて自動改札を出るまで大塚由宇は意識的に周りの音を聞いていた。日本語、中国語に韓国語、それに英語、他の言語も混ざり合っていた。何年か前から駅の様々な箇所の案内がいくつもの言語が表示されるようになった。東京オリンピックのための準備でもあり、海外からの旅行者のためのものだ。それが言葉だとわかるのに、その意味がわからないことに不思議さとどこか安堵を彼は覚えていた。 わかるものとわからないものが体を包んで、自分の中に入ってくると新しい人になれるようで、それが彼は好きだった。様々な言語が入れ替わって、知らないうちに混ざり合って・・・・・・・・・・

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