『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』外伝 小説「ジャンボ鶴田が黒パンツに変えた日」(9)

「田舎の夜は早い」というのは嘘だと佐藤昭雄は長年の経験から知っている。店仕舞いが早いのは客が来ない場合で、客が一人でもいれば田舎の店はいつまでも開けてくれる。 東北の山村の興行で数百人の前で試合を終えた佐藤は、旅館には寄らず、会場からそのままタクシーを二十分ほど走らせ、奥地の小さい料理屋に向かった。セミファイナルでタッグを組んだジャンボ鶴田も一緒である。鶴田は「この辺はなんにもないですねえ」と当然のことを口にしたほかは車中で口を開かず、佐藤も「うん」と返しただけで一言も発しなかった。「よく、こんな山奥で、こうした店をやっていけるものか」 古めかしい門構えを見て、佐藤は改めて感心した。今のようにインターネットのない時代に隠れた店を見つけるのは、人の紹介以外ない。地方の会場には必ず土地の顔役がいる。現役レスラーの石川敬士が興行を手掛けたこの日、石川に「今日、切符たくさん売った人、誰?」と訊いた・・・・・・・・・・

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