『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』外伝 小説「ジャンボ鶴田が黒パンツに変えた日」(8)

 佐藤昭雄から見てジャンボ鶴田は歯痒い存在だった。 恵まれた体躯に優れた運動神経は、誰しも与えられるものではない。まぎれもなく天性の素質だろう。にもかかわらず、プロレスが一向に巧くならない。足の運びも相変わらずバタバタしているし、オーバーアクションもわざとらしい。何より動きにキレがない。すなわち緊張感が感じられない。下手なら下手なりに真剣にやればいいのだが、気の抜けたような緩慢さが目立つ。「ほらほら、今、鶴田の顔見たっとね。敵さんに何か喋っとったばい」「見た見た。プロレスはやっぱり八百長ったい」 九州のどこかの会場で客が愉快そうに話しているのを見たときは、情けなくて逃げ出したくなった。 そもそも、ロープに飛ばされるとき、笑っているように見えるのは実にいただけない。せめて、テレビ中継のときだけはその癖は出さないでくれ。もしかしたらこいつは、本当に笑っているのかもしれない。「プロレスに就職しま・・・・・・・・・・

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