本屋大賞の発起人・嶋浩一郎「いい本屋は欲望を言語化してくれる」

2013年6月6日02:00

『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか(祥伝社新書321)』 嶋 浩一郎 祥伝社 842円

 「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」をキャッチコピーとして掲げ、書店員の投票によってノミネート作および受賞作が決定される本屋大賞。百田尚樹さんの小説『海賊とよばれた男』が今年の4月に同賞の大賞に輝いたのは記憶に新しいところです。出版不況といわれて久しいですが、『海賊とよばれた男』は発行部数100万部を突破。"冬の時代"といわれている出版業界にとって明るいニュースとなりました。

 そんな本屋大賞を立ち上げたのは、NPO法人本屋大賞実行委員会の理事で博報堂ケトル代表取締役社長・共同CEOの嶋浩一郎さん。2012年にはブックコーディネーターの内沼晋太郎さんと"ビールが飲める本屋"である下北沢の書店B&B(Book and Beerの意)を開業し、書店の新しいロールモデルを提示することで、出版業界の活性化に取り組んでいます。

 毎日書店に足を運ぶことを日課とし、出張に行けば必ずその土地の書店に立ち寄るという嶋さん。自著『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』のなかで、嶋さんは自らが書店に行く理由を次のように語ります。

「なにか新しいことに触れたいというときは、ネット書店よりもリアル書店、つまり普通の本屋のほうに利があります。なぜなら、本屋に行くと"想定外の情報との出会い"があるからです。ここがネット書店との大きな違いです。"想定外"というと別にそんなものは必要ない、求めている情報が手に入ればいいと思われるかもしれません。しかし、その想定外の情報こそ、実は自分が求めていた情報であったり、意外にも役立つ情報だったりするのです」

 嶋さんがいう「いい本屋」とは"買うつもりのなかった本を買わされてしまうようなところ"とのこと。「自分も気づいていなかった、自分が読みたいと思っていたもの」に出会うことで、自分のなかで言語化されていなかった欲望が明らかになっていくといいます。

 思わぬ人との出会いがその後の人生を左右することは珍しくありませんが、それは本も同じ。ふと立ち寄った書店で何げなく買った本が、その人に大きな影響を与えることもあるはず。ネット書店派の方もリアル書店派の方も、本書を読めば書店の新たな魅力に気づくことでしょう。

『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか(祥伝社新書321)』

嶋 浩一郎 祥伝社 842円

Amazonで購入する

関連リンク