「地盤、看板、カバン」を持たないフツーの政治家の出費~『民主党代議士の作られ方』

民主党代議士の作られ方 (新潮新書)
『民主党代議士の作られ方 (新潮新書)』
出井 康博
新潮社
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 「政治とカネ」の問題が厳しく指摘されている昨今ですが、選挙では地盤、看板、カバン(=お金)のいわゆる「三バン」がないと当選は難しいと言われています。鳩山首相のように母親から毎月1500万円ものお小遣いをもらっているのであれば苦労することはありませんが、カバンのない候補者はどのように資金を工面しているのでしょうか。

 ジャーナリストの出井康博さんは、昨年の衆院選で民主党から出馬・当選した2人の代議士に密着取材し、著書『民主党代議士の作られ方』で、選挙中に必要なお金について紹介しています。

 神奈川17区から出馬し、34歳の若さで初当選を果たした神山洋介代議士の場合、事務所の家賃、駐車場代、スタッフの人件費など、固定費だけで毎月の出費は200万円近く。これに加えてチラシの印刷費などもかかりますし、家族が暮らすアパートの家賃や生活費も必要となります。丸2年の活動で、使った金額は約5000万円。これでもかなり抑えたほうらしく、「1億円でも、使おうと思えば簡単です」(神山)とのこと。

 一方、収入はというと、公認候補の間は活動費50万円+生活費20万円が毎月支給されます。2008年10月に党からの公認が正式に決まると、公認料として500万円(その代わり毎月の支給はストップ)が支給されたそうです。神山代議士のような新人の場合、いわゆる政治資金集めのパーティーを行っても利益はほとんど出ないうえ、企業から受け取った献金も1年で30万円程度、個人からの献金も月に数万程度。党からの追加支援はあったそうですが、とても活動を支えきれるほどの金額ではなかったといいます。

 結局、神山代議士の活動を支えたのは、父親から借金した3000万円。当選できたからいいものの、これで落選していたらと考えると恐ろしい。わざわざそんなリスクを背負ってまで国会議員になりたい人が、どれだけいるでしょうか。現在の選挙制度では、選挙期間中の12日間は出費に関する規制があるものの、それ以外の期間に関しては事実上制限がないため、どうしても「カバン」をたくさん持っている候補者が有利になってしまいます。こうした選挙の仕組みを変えない限り、有能な政治家は減っていくばかりなのかもしれません。

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