生涯年収9億円? JALパイロットの知られざる実態~『JAL崩壊』

JAL崩壊 (文春新書)
『JAL崩壊 (文春新書)』
日本航空・グループ2010
文藝春秋
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Q:世界一高額な給料をもらい、美女に囲まれて仕事をしていても、不平不満を言うサラリーマン集団とは誰でしょう?

A:JALパイロット。

 今年1月19日に経営不振を理由に会社更生法の手続を申請した日本航空(JAL)。日本最大手の航空会社にもかかわらず、なぜ破綻してしまったのかは、一般人には理解に苦しむところ。原油高騰や不景気の煽りを受けたのかもしれませんが、他の航空会社は破綻していないのになぜJALだけ...と不思議に思った人も多いのではないでしょうか。

 そんな方は『JAL崩壊 ある客室乗務員の告白』を読むと、納得できるかもしれません。本書は現役とOBの客室乗務員たちが、JAL内で働いて実際に見聞きしてきた数々の事柄を綴った、いわば「内部告発本」。これまでお役所気質が強く、あまり内部を公にはさらしてこなかったJALパイロットや客室乗務員たちの実態が、赤裸々に綴られています。なかには「エッ?」と目を疑うような事実もたくさん出てきます。たとえば、まず驚くのがパイロットたちの待遇の良さ。

 一般サラリーマンの生涯年収はだいたい2億円から2億5千万円と言われていますが、なんと機長クラスになると、基本年収が3千万円近くなり、生涯年収が9億円にものぼるそうです。この額は、トータルで考えれば弁護士や開業医の人よりも高いのだとか。たしかに高度な専門職であり、体にも負担をかけやすい職業ではありますが、労働時間が一般サラリーマンよりも少ないのにこんなに高額だったとはかなりの驚きです。

 ほかにも「実はコックピット内で、誰も計器を観ていない瞬間が多々ある」「フライト中、コックピット内で居眠りもザラ」「なにか事故が起こっても、その事故を起こした当事者は責任追及されにくい」など、一般企業では考えられないほどゆる~い組織なんだとか。しかも「世界一高給取りが多い上に、ゆるい労働条件」にもかかわらず、「家が横浜で、成田空港まで遠いから、日帰りフライトはきつい」「高齢になると長距離フライトは体にきついから短距離で無理のないフライトに変えて欲しい」などと、パイロットたちは常に労働条件改善に余念がないそうです。

 また、「渡る世間は鬼ばかり」並に熾烈なバトルが繰り広げられているCAたちの実情や、年がら年中裁判ばかりやっている労働組合など、これまで秘密裏にされてきたJALの全貌が一気に浮き彫りにされています。それらをふまえると、「いかにナショナルフラッグでも、それは潰れるわ...」と思わずつぶやかずにはいられません。JAL再建では、こうした実態が改善されることを願いたいところです。

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