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エイリアンがエイリアンを故郷に帰す『宇宙人ポール』

宇宙人ポール [Blu-ray]
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 日頃、好んでB級ボンクラ映画ばかり視聴しているため、壮大なSFというジャンルに触手が伸びない。「金かかっていそうな映像だなぁ」という感想は抱けても仕事で疲れた頭には刺激が強い。痺れるような興奮を楽しめない人間にも楽しめるSFはないものかレンタルビデオ店で適当に漁っていたら本作を引き当てた。

 ボンクラな英国人SFヲタ2人が、政府施設から脱走した宇宙人のポールと「エリア51」で出会い、大麻吸ったり何だりとロクなことをしないでゆるいロードムービー。『未知との遭遇』や『E.T.』など様々な著名なSF映画のオマージュを大量に詰め込み、シガーニー・ウィーバーやスティーブン・スピルバーグ監督らがカメオ出演しているという無駄な豪華さも味わい深い。

 作品の舞台が基本キャンピングトレーラーの中で、画面には冴えない野郎2人と、米国英語を流暢に操る下品な宇宙人、途中から現れるキリスト教原理主義者の娘という塩梅ゆえ、派手さはない。宇宙人のポールを追う米国政府の役人もSFマニアのボンクラときている。表層的にはSFオタク向けの映画に見えるが、むしろSFに詳しくない視聴者が楽しめる作品かもしれない。

 ポールはエリア51に墜落してからスピルバーグ監督に『E.T.』の着想を与え、『Xファイル』の原案を担当したという設定。半世紀以上にわたり米国ポップカルチャーを築き上げてきたと言える。むしろ、宇宙人のポールこそが米国人だ。一方の主人公2人は英国人で、まさにエイリアン(外国人)。エイリアンがエイリアンを故郷に帰すため尽力するというあらすじになっている。皮肉の効いた構成だ。
 冒頭で主人公が宿泊したホテルのボーイに「エイリアン(宇宙人)に興味ある?」と訊ね、ボーイが片言の英語で「私はエイリアン(外国人)です」と返すやり取りが作品の意味を暗示しているように思う。

 もっとも、難しく考えずともフレンドリーで口を開けばエロ話ばかりの下品な宇宙人という設定で十分に笑える。登場人物が漏れなくボンクラなので「バカだなぁ」とニヤニヤしているだけで十分に元は取れる作品だ。

(文/畑中雄也)

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