もやもやレビュー

バンドと観客が入り混じり、多幸感あふれる祝祭の場『ザ・クランプス 精神病院ライブ』

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 米国のバンド「ザ・クランプス」が精神病院の患者の前で20分間、延々とライブしているだけの本作。
果たして映画というジャンルに入れて差し支えないのか分からない。クランプスの演奏が始まると患者たちは各々好き勝手に踊り、歌い、叫ぶ。映像はモノクロで不鮮明だしカメラワークも適当で、何を撮影しようとしているのかが皆目見当がつかない。

 そもそも、作中に一切の説明がないのでクランプスが慰問でライブを行ったのか、それとも別の意図があったのか判断できかねる。精神病患者を晒し者にしようとするなら、カメラは彼らを中心に映すはずだが、観客やバンドメンバーを無造作にアップと引きを繰り返しているだけで、何も読み取れない。

 ただ、当初は無関心だった患者たちが演奏の途中で気分が高揚したのか壇上に登り始め、演者と観客が混然一体となっている様子は幸福そうだ。英語云々の前にボーカルのラックス・インテリアが奇声としか聞こえない歌声を響かせ、患者もそれに呼応するように奇声を上げる。映像が読み取れなければ何を発言しているのかさえ聞き取れない。どっちがどっちなのか1度視聴しただけでは理解できなかった。だが、その区分が重要ではない気がする。音楽が流れ、喜ぶ人間がいる。それで十分だと思う。さらに何か加えるとしても「音楽は聴衆の状態に関係なく人を高揚させる効果がある」というだけだ。

 おそらく、ザ・クランプスについて知る日本人は少ない。ネットなどで検索しても「カルト的な人気を誇った米国のバンド」という程度の情報しか出てこない。本格的に調べればより多くの情報を得られるだろうが、本文はあくまで映画レビューなので割愛する。

 彼らの感動や衝動を隠さない姿にある意味、うらやましさを覚える。それだけ純粋に音楽に酔いしれることができているからだ。音楽という感情に直接訴える作品を聴きながらつまらない自意識が邪魔して悦びを素直に表現できない。本作を視聴していると、感情を呼び起こすものに触れながら知識や理屈を求める我々の方にこそ何か問題があるような気がしてくる。

(文/畑中雄也)

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