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怒りが沈まない時の処方箋!? 『あなたを抱きしめる日まで』

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2014年のアカデミー賞で5部門にノミネートされた、実話に基づいた物語。主人公は、50年間誰にも話すことなく抱えてきた秘密を、ある時、娘に打ち明けたフィロミナ(ジュディ・リンチ)。

1952年のアイルランド。未婚のまま10代で妊娠し出産するも、家を追い出され、修道院で子供の保護と交換条件でただ働きを強いられていました。フィロミナは子供をアンソニーと名付け、一日一時間しか許されない面会の中でも愛情を注ぎますが、それも長くは続かず、アンソニーは養子として他人に引き取られてしまいます。

それから50年。息子を探す決意をしたフィロミナと、彼女の娘から依頼を受けたジャーナリストのマーティン・シックススミス(原作の作者)とが、アンソニーを辿る旅の様子が描かれます。

アイルランドでは今なお、カトリック修道院による養子縁組と称し、金銭と引き換えに幼児をアメリカに養子に出していて、その被害者である母子がお互いを探し続けているのだそう...。フィロミナもアンソニーも然り...。

そんな事実も衝撃ですが、さらに驚いたのは、生き別れた息子のその後を知ったフィロミナが、自分や息子を欺き続けた教会のシスター達を赦したこと。当事者ではないマーティンが「赦さない」と言っているにもかかわらず。さらには、当時の事情を知る老いたシスターを別棟に隠したり、アンソニーの手がかりになる資料を燃やすなど、教会自身も自らの非を肯定していたにも関わらず。

でも、この「赦す」という行為、実は相手にとっては最も重いパンチだったかもしれません。
罪の意識や悪いことをした自覚があるのに、怒られも責められもしないとしたら? それはつまり犯した罪から解放してもらえないことであり、いわば生き地獄のようなものであるはずです。
相手をどうしても赦せない時ほど、迷わず赦すよと言ってみるのも、ありかもしれません。

(文/森山梓)

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