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『アオハライド』 中年が青春ラブストーリーを観ると死ぬ

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 いわゆる恋愛映画の楽しみ方が分からない。鏡を千回眺めても自分の容姿はよくて十人並みだし、付き合う相手にしたところで、自分の彼女でなければ街ですれ違っても意識するようなルックスではない。まさに割れ鍋に綴じ蓋。似た者同士。傷の舐めあい。妥協の産物。

 ところが、恋愛映画の出演者は目を見張るような美男美女。我々凡夫凡婦には何の共通点もない。せいぜい同じ人間という程度だが、あのような美貌を見る限り、それすら怪しくなってくる。芸能人なのだから美しくて当然なのだけれども、胸がときめくシーンや恋い焦がれる様など、どの場面を切り取っても顔の出来が違い過ぎて自己投影する余地がない。『エイリアン』を観ている方がまだ共感できる。

 ゆえに「皆さんはSFか何かを観るようなノリで鑑賞しているのかな?」と思っていたが先日、人三化七の女性が『アオハライド』を観て「思わず号泣しちゃった!」と熱弁を振るっていた。
聞いているこちらはてっきり自身の醜さを再確認して泣いたのだと思っていたが、主人公の心情に共感したらしい。
「君、本田翼じゃねぇ上に、もう40歳近いのに高校生に共感するのかね?」と真顔で訊ねたら、フルスイングで顔面を殴られた。彼女の精神状態は重篤の様子。良き友人として是非いい病院を探そうとしたが、その前に本作を視聴することにした。もしかしたら筆者の根性がねじ曲がり過ぎて酷いことを言った可能性もある。

 本作は漫画『アオハライド』(咲坂伊緒・著)をヒロイン役の吉岡双葉に本田翼、相手役の馬淵洸に東出昌大を据え映画化。
 中学時代、双葉は洸に好意を寄せ、告白はしなくとも両想いの状態だった。しかし、一緒に行くはずだった夏祭りに洸は現れず、2学期には転校していた。洸への思いを引きずったまま高校へ進学した双葉。そこへ偶然、同じ高校へ同級生として洸が転校してきたが、苗字は馬淵(旧姓は田中)になり、性格も爽やかな好青年から暗く皮肉屋へと変わっていた......あとはアレです、気持ちのすれ違いとか馬淵の過去とか最後は結ばれハッピーエンド。以上!

 ジャンルは青春ラブストーリーなので、青臭いのは本作の狙いだろう。登場人物が全員老成した高校生という映画は流石に観たくない。おまけに無駄に生きれば嫌でも思春期を迎えるので、脳内を自分で洗脳すれば余裕で類似点を見いだせるかも知れない。
 恋に恋する男女が魅了されるのはまだ理解できる。誰だって自分を主人公だと思いたいし、美男美女と恋愛したい。これは自然な心理だ。しかし、現実はどうか。結局のところ「まぁ、自分はこの程度だし、この相手でいいか」と妥協を重ね生きるしかないのではないだろうか。こう書くと「自分は大好きな人とだけ付き合ってきた!」とヒステリックな反応を受けるのであらかじめ返信すると「お前の大好きって、期間限定かよ。大体、その『大好き』って言葉を今まで何人に使った?」で十分だろう。

 中年が青春ラブストーリーを視聴するというのは結構な拷問だ。やはり、上記の彼女はどこかの病院に連れていかねばなるまい。

(文/畑中雄也)

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