もやもやレビュー

『裏切りのサーカス』は、クルミを齧りながらを観よう。

裏切りのサーカス スペシャル・プライス [Blu-ray]
『裏切りのサーカス スペシャル・プライス [Blu-ray]』
ゲイリー・オールドマン,コリン・ファース,トム・ハーディ,ジョン・ハート,トビ―・ジョーンズ,トーマス・アルフレッドソン
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安い酒を飲みながら、夢を熱く語りあった若さは一体どこへ行ったのか。友人らと会うと、健康話に花が咲く。あの食材が身体に良いだの、スーパーフードがなんだのと。どうやら、記憶力や学習力アップにはサーモンやクルミが効くのだと言う。読みかけた小説の内容をすっかり忘れてしまい、最初から読む羽目になる私にも効いてくれるだろうか。

記憶というと、髪の毛をかきむしってしまうほど混乱に陥ってしまった作品がある。70年代のスパイ小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を、トーマス・アルフレッドソン監督で映画化した『裏切りのサーカス』である。時は東西冷戦のまっただ中、英国の秘密情報部[サーカス]に、ソ連からの二重スパイがいることが発覚。引退した老スパイが偽物をあぶり出すために動き出す。裏の裏をかくというストーリーであるだけでなく、極秘調査という設定なので、人名を暗号で呼ぶ。登場人物が多い上にセリフも少なく、淡々と進むストーリー。マジ混乱!

公開時のチラシには、ストーリー、人物相関図などを、ある程度把握してから見るように。と書かれていた。そう、事前情報を頭に叩き込まねば、集中が途切れた瞬間、話についていけなくなってしまうのである。このコラムを書くにあたり、久しぶりに予告編を見てみると、「一度目、欺かれる。二度目、真実が見える」とあった。何度も見ることで面白さが増す映画なのである。しかし、いくらストーリーが面白いといっても、こんな難解な映画、何度も見られるものだろうかとためらうかもしれない。大丈夫。そう胸を張って言える理由がある。なぜなら、魅力的な俳優陣が揃い踏みだから。ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ハーディ...。チャプターを行きつ戻りしつつ、一瞬も見逃すことなかれ。お供にはクルミをオススメする。

(文/峰典子)

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