もやもやレビュー

君は悪魔より恐ろしい。『ゴーン・ガール』

映画『ゴーン・ガール』は、全国公開中です。

 布施明さんの名曲「君は薔薇より美しい」に、こんな一節があります。
「だました男がだまされる時 はじめて女を知るのか」
 本作は一組の夫婦、そしてより根本的な人と人の物語です。

 5年目の結婚記念日、夫であるニック(ベン・アフレック)は自宅の異変に気付きます。ひっくり返され天板のガラスが砕けちったテーブル。台所の床にこびり付いた大量の血痕。そして、姿を消した妻のエイミー(ロザムンド・パンク)。すぐに警察へ通報したニックですが、その捜査の中で濃くなっていくのは、不自然な現場の状況、年下の愛人の存在など、ニック自身への妻の殺害容疑でした。エイミーが妊娠していたことも発覚し、「美しい、身重の妻を殺した非道な夫」というレッテルをはられるニック。困惑する中で彼が突き止めたのは、自分が今まで気付かなかった妻の悪魔的な一面でした。

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 本作のストーリーは中盤のある展開によって、大きく様相を変えます。前半のサスペンスフルなミステリー劇は、一つのスイッチにより、夫婦のあいだに横たわっていた溝と欺瞞を映す、ホラー映画のようなドラマへと変貌。私が鑑賞した際は、後ろの席でワチャワチャ騒いでいたカップルが、上映後には破局寸前のような空気で席をあとにしていました。

 劇中でフォーカスされるのは、結婚や妊娠という出来事によって、固く結ばれてしまう「夫婦」という関係性について。そして、それ以上に、「他人と深く、真剣に付き合うこと」について考えさせられる作品です。お一人での鑑賞を強くおすすめします。

(文/伊藤匠)

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『ゴーン・ガール』
全国公開中!

原題:GONE GIRL
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイクほか
配給:20世紀フォックス
2014/アメリカ/英語/148分

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/
© 2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

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