もやもやレビュー

人間嫌いの人に捧げたい。『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』

『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』は3月14日(金)公開です!

 すごい映画がきました。キャストは主演のロバート・レッドフォードただ一人。舞台は誰もいない、何もないインド洋の大海原。そんな状況下で、独り言を駆使して状況&心情説明をするなんていう反リアルなことは、もちろんしません。全編に渡って台詞もほぼなし、レッドフォードによる船上の一人芝居に終始するこの映画。なのに退屈どころか、心底魅せられてしまうからすごい。

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77歳にして体を張りまくるロバート・レッドフォードをリスペクト!

 悠々自適な単身ヨット旅を楽しむ年老いた男。ところがある日突然、海上を漂流していたコンテナが船体に激突。横っ腹に穴があいた船室は水浸しに。しかも無線機やPCは水没して壊れてしまい、通信手段を失った男はたった独り、広大な海で遭難してしまいます。必死の補修作業もむなしく、やがて船を捨てることを決意する男。生きるための過酷な闘いが描かれます。

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見渡す限り何もない、海の上が舞台です。

 同じく絶望の淵での孤独な闘いを描いた『ゼロ・グラビティ』に比べ、圧倒的に地味でストイックな本作。冒頭で退屈しないと言いましたが、やっぱり正直、人を選ぶ作品かも知れません(実は途中で少し意識が遠のいたりもしました)。

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ゴムボートで漂流中のロバート・レッドフォード

 が、ラストで体験する何とも言えない気持ちは、ほんとに特別です。すべてから解放されて温かなものに包まれるような感覚に、思わずぶわっと涙が溢れてしまうんです。これは他に代え難く、絶対に味わってみて欲しい体験です。特に、俺は人嫌いの孤独な戦士!と思っている、尖ったナイフのような人には。きっと、心の底では、自分も人を求めていたんだってことに、気付くと思います。

(文/根本美保子)

『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』
3月14日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開

原題:All is Lost
監督・脚本:J.C.チャンダー
出演:ロバート・レッドフォード
配給:ポニーキャニオン
2013/アメリカ/英語/106分

公式サイト:http://allislost.jp
©2013 All Is Lost LLC

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