もやもやレビュー

『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』を観て、向上心を取り戻そう。

 毎日渋谷で買い物してぇ! スーパーひたちじゃなくて山手線に乗りてぇ! 公園通りでウキウキしてぇ!!!!

 そう息巻いて東京に出てきて10数年。いつしか洋服への興味は薄れ、行きつけはジャスコとかの方がむしろカッコいいんじゃないか!なんて思うようになる。大人になるってそんなものかもしれません。でも、夢とかハングリー精神とかモチベーションとか。そういう大事なものを失ってしまう原因のひとつに、もしかすると買い物意欲の喪失が関係しているかも知れない。

『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』は、世界中のファッショニスタが心酔する、ニューヨーク五番街の超高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」の歴史と舞台裏を描いたドキュメンタリー映画。

 60年代のファッションアイコン、ジャクリーン・ケネディ(ジョン・F・ケネディ夫人)や、ジョン・レノン、グレース・ケリーといった往年のセレブリティが贔屓にし、現代においては『セックス・アンド・ザ・シティ』の主人公たちがオシャレ欲を満たすために通う場所でもあります。

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スタイリストの先駆けともいわれる凄腕のパーソナルショッパー、ベティ・ホールブライシュ氏。

 インタビューに答えるのは、マノロ・ブラニク、クカール・ラガーフェルド、ジョルジオ・アルマーニ、リスチャン・ルブタン......といったファッション界のスーパー・スターたち。彼らの言葉はどれも、いかにもニューヨークを感じるウィットに富んだものばかり。というかデパートの販売員も、通りすがりの一顧客ですらも、素晴らしいウィットを持っています。ニューヨーク、すごいです。

 ちなみにこの映画、単にファッション好きのための映画というわけではありません。むしろビジネス・ストーリーとして印象の方が強く、アメリカン・ドリームは今もある! 富裕層を相手に仕事をする時に必要なことはコレ! などなど、けっこうタメになることを教えてくれたりもします。積ん読しているビジネス書なぞ古本屋に売り飛ばして、とっととこの映画を観た方が100倍やる気が出ます。

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 なかでもぐっときたのは、映画プロデューサーの女性が語ったこんな言葉。

「みんな出世したいの。高級デパートは人に夢を与えもっと上に行きたいと思わせるために必要な存在なのよ。アメリカン・ドリームの象徴。夢を叶えたい人は行くべきだわ」

 不況が続き過ぎて諦めモードになり、ついには買い物とかダセーなんて思うようになる。この流れはもしかすると、ただの逃げだったのかも!? よく、ゴールを明確にイメージすることが成功の鍵だと言われますが、たとえ買わなくても、高級デパートに行って美しい靴や服やモノを目にすることは、未来を形作る作業として必要なことなのかも知れません。安かろう悪かろうなモノしか見ていなかったら、目指すゴールなど思い描けないのかも。

 というわけで、非常にやる気を出させてくれる映画です。夢を失いかけている人にぜひ観て欲しい。上昇気流が生まれるかも知れません。

(文/根本美保子)

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『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート』
Bunkamuraル・シネマほかにて公開中!

監督:マシュー・ミーレー
出演:リンダ・ファーゴ、ベティ・ホールブライシュ・デヴィッド・ホーイ ほか
配給:ショウゲート
2013/アメリカ/英語/94分
http://bergdorf.jp

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