連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第61回 『キラー・アンツ 殺人蟻軍団・リゾートホテル大襲撃!』

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 今年5月、神戸港で貨物船のコンテナの中から発見された外来種のヒアリは、その後も日本各地で続々と見つかり、7月27日には博多港で作業員が刺され国内初の人的被害が出た。人命に関わる事は稀だが、アナフィラキーショックによる死亡例から「殺人アリ」と呼ばれている。これはもう、リアル生物パニックだ。アリを題材にしたパニック映画と言えば、アマゾンの奥地でマラブンタと呼ばれるアリの群れが、真っ黒になって何もかも食い尽くす『黒い絨毯(じゅうたん)』(54年・米)が古典的名作として知られるが、ここでは低予算テレビ・ムービーの迷作を紹介しよう。


 風光明媚なリゾート地に建つレイクウッド荘は、車椅子に乗った品のよい老婦人が主人を務める築100年を誇る老舗ホテルだ。隣の敷地では近代的なホテルの建設が着工したばかりだが、基礎の溝に入っていた作業員が「助けて!」と叫び、同僚が救出に飛び込む。だが、うっかり者のビンスが、溝に人がいる事を知らずに「ドバーッ」とブルドーザーで土砂を掛けてしまう(大量の土砂で本当に役者を埋めている)。助けを求めていた方が死亡するが、死因は窒息ではなく毒死だった。工事現場の排管やホテルの厨房の排水口でワサワサひしめくアリの群れが映し出される。

 現場監督のマイケル親方とビンスが病院から現場に戻ると、保健省の役人が労働災害の調査に来ている。ここで今度は、主人の孫がアリに集られて病院へ送られる。気落ちしている彼女のもとへ、宿泊していた実業家のトニーが現れる。「レイクウッドを第2のラスベガスに」と目論むトニーは、隣で建設中のホテルの責任者グロリアの彼氏だ。トニーはレイクウッド荘を一通りベタ褒めしたあと「建物は残して、あなたには相談役の座を用意する」と買収の交渉を進め、主人の好感触を得る。でも実はそんなの真っ赤な嘘で、契約後にすぐ建物は取り壊しカジノを作る腹だ。

 基礎の溝ではマイケル親方が部下を殺した毒の持ち主を探し、「コイツか?」と数匹のアリを空き瓶に詰める。やがて厨房でコックの変死体が発見され、アリの仕業とは知らない保健省の役人はホテルを閉鎖し、伝染病センターに連絡する。マイケル親方が「犯人はコレだ」と瓶詰したアリを見せるが、頭の固い役人は一笑に付す。だが瓶詰のアリは保健省の施設に持ち込まれ、人為的な有害物質を取り込んで毒にしている突然変異と鑑定結果が出る。ヒアリは毒針で刺すが、コイツは噛んで毒を注入するのだ。

 いつの間にかホテルは毒アリの群れに包囲され、この騒ぎの中でも我慢できずベッドインするトニーとグロリア。スッキリしたトニーが主人の部屋へ契約に向かうため出て行くと、知らぬ間に侵入していた毒アリ軍団が全裸でぐったり寝ているグロリアを毒殺する(肌に本物のアリを実際に這わせている)。役人もホテルの外へ出てアッという間にアリに集られ、階段から転落して死亡。マイケル親方と作業員達は、宿泊客を工事車両で避難させる。
 マイケル、主人と娘、トニー、若い従業員とガールフレンド。ホテルに残された6名は2階に避難するが、アリンコ軍団はグングン上へと昇ってくる。警察と消防が駆け付け、自ら陣頭指揮を執る警察署長はどこかで見た顔と思ったら、『ランボー』でスタローンを虐めていた保安官役のブライアン・デネヒーで、ここでは正義感溢れる署長さんだ。

 避難した宿泊客達が見守る中、消防ハシゴで救出作戦が開始されるが、トニーは女性陣より先にハシゴに乗ろうとして、従業員に胸倉を掴まれる(苦笑)。消防員の決死の救出も虚しくハシゴ作戦は女の子1人を脱出させただけで終了する。予想外に早くアリンコ軍団が2階に到達したのだ。マイケル達は最上階の4階へ移るが、そこまでハシゴが届かない。ここでヘリの出動となるが、これが大変な事態を招く。

 ヘリは見事に主人の救出に成功するが、着陸した時の豪風で無数の毒アリが「ぶわぁ~っ」と吹き飛ばされ、遠巻きに見物していた宿泊客達に降り掛かる(笑)。周辺にいた警察官や消防隊員らも「うわ~!」と一緒になって大パニック! 笑う所ではないが筆者は思わず吹き出した。ビンスは機転を利かせて、消防ホースで放水して彼らのアリを払う。

 さて、防護服で残り3名の救出に向かう事になるが、町から服が届くまで30分掛かる。保健省の科学者は「動かないでじっとして、アリに息をかけなければ噛まれない」と3人に無茶なアドバイスを送る。「ええ?」とマイケル親方は怪訝な顔をするが、やらなきゃ死ぬ。壁紙を剥がし丸めてストローを作り、それで呼吸をする(忍者の水遁の術か!)。

 アリに集られた3人の男女が背中合わせに座り、じっと動かず丸めた紙をくわえて空気を「スーハー」している図は、カルト宗教の修行、またはコントにしか見えない(笑)。やがて3名に我慢の限界が近づく。毒アリが顔を這い始め恐怖に引きつる3人(役者も大変だ)。ここで脱落するのは、もちろんトニー。「キュルキュル」という弦楽器による不快な効果音が頂点に達した時、「うわあ~!」と立ち上がりベランダへダッシュ! ホテルの外で人々が注目する中、下のプールへダイブ! だが水面には届かず、地面に激突して即死! ほんの数秒後、救助隊がスペアの防護服を持って到着する......。救助隊は殺虫剤を人間ごとブッ掛けて(だ、大丈夫なの?)、マイケル親方と主人の娘は助かる。


 以前ここで紹介した『スクワーム』(第15回)は、無名時代のジェームズ・キャメロンがゴカイの群れをプルプル動かしていた。こちらではオープニングのタイトルロールで「アンツ・コーディネーター ウォーレン・エステス」という表記を見つけた。この人がアリさんの「演技」を付けていたのね。

(文/天野ミチヒロ)

『キラー・アンツ 殺人蟻軍団・リゾートホテル大襲撃!』
原題『ANTS!』
1977年・アメリカ・95分
監督/ロバート・シアラー
脚本/ガードン・トゥルーブラッド
出演/ロバート・フォックスワーク、リンダ・デイ・ジョージ、スザンヌ・ソマーズ、マーナ・ロイほか

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
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