連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第44回 『クリッター3』

『クリッター3』
原題『CRITTERS 3』
1990年・アメリカ(日本未公開)・90分
監督/クリスティン・ピーターソン
脚本/デヴィッド・スコウ
出演/ドン・オッパー、レオナルド・ディカプリオ、エイミー・ブルックス ほか

 4月22日に日本公開が迫るレオナルド・ディカプリオのアカデミー主演男優賞受賞作『レヴェナント 蘇えりし者』。レオ様がオスカー初受賞とは意外だが、何度もノミネートされながら、『タイタニック』(97年)の時には『恋愛小説家』のジャック・ニコルソン、『アビエイター』(04年)の時には『Ray レイ』のジェイミー・フォックスと、常に超大物が立ちはだかったのだ。だからこそ、悲願成就のレオ様を心から祝福したい。なんて祝賀ムードに水を差して申し訳ないが、そんなレオ様が触れて欲しくないと噂されるデビュー作『クリッター3』は、おそらくインタビューでもNGワードだ。

可愛いギズモが凶暴な怪物に変身する『グレムリン』(84年)の大ヒットは、『グーリーズ』(85年)やロジャー・コーマンの『まんちいず』(87年)など、小さな怪物が群れをなして暴れる便乗作品を次々と生み出した。その中の1本が『クリッター』(86年)だ。クリッターとは「奇妙な生物」を意味するスラングで、『遊戯王』『スーパードンキーコング』などのゲームキャラ、『ウルトラマンティガ』に登場する怪獣名にも使用されている。

まずは1作目の説明から。銀河系辺境にある宇宙刑務所から、数匹の極悪宇宙生物クリッターが脱獄。身長40センチの二頭身、手足には3本の爪。鋭い歯がサメのように何重にもなって並ぶ大口で何でも食べる。武器は相手を無気力にする毒のある硬い体毛を、ゲゲゲの鬼太郎のように飛ばす毛針攻撃! 移動する時には体を丸めてコロコロ転がる。宇宙の賞金稼ぎに追われたクリッター達はアメリカの田舎町に逃げ込むが、アル中で無職30代のダメ大人チャーリー(ドン・オッパー)だけが友達という落ちこぼれ小学生に撃退される。その後チャーリーが賞金稼ぎに弟子入りする『クリッター2』(88年)が製作され、本家『グレムリン2』(90年)が大コケしても『クリッター3』は作られたのだ。

父子家族がオンボロ車で旅行中にタイヤがパンク。そこは偶然にもクリッター騒動があった町だった。父親が修理している間、周辺で遊んでいた幼い弟のジョニーが崖に佇んでいると、ふいに「ヘイ! 危ないぞ」と少年に肩を掴まれる。この少年ジョシュこそ、撮影当時若干15歳のレオ様だ。幼さが残る顔だが、天知茂のように(例えが古い?)常に眉間に皺を寄せていて、すでに甘さと渋さが同居している。ちなみに当時のビデオジャケットには「レオナルド・ディッカプリオ」と記載されていて、まだレオ様が無名だったことを物語っている。この7年後に彼は『タイタニック』でスーパースターの仲間入りをするのだ。

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当時のビデオジャケット裏面。出演者のところに、「レオナルド・ディッカプリオ」の文字が!

ジョニーの姉アニーや、そこら辺にいた子供達もレオ様と一緒に仲良く遊んでいると、地面に敷き詰められた落ち葉の中から、ヘッドライトを額に付けた探検家のような恰好をした男がワッと現れる。すっかりシリーズの常連になっているダメ大人のチャーリーだ。誰がどう見ても不審者のチャーリーは驚いている子供達に怪物退治をしていると説明するが、「そんな話、信じないよ」、「おじさん、アブナイ人?」と当然の反応をされる。

修理を終えて親子は都会のオンボロアパートに帰るが、立ち寄った町に潜んでいたクリッターの生き残り4匹が、いつのまにか車に便乗していたから大変。まずクリッター達はアパートの地下室で管理人を食い殺す。その管理人は住人の部屋にネズミを放し、エレベーターをわざと停めて故障に見せかけるなどの嫌がらせを繰り返し、住人が自発的に出て行くような工作をしていた。スーパーマーケットを建てるため、立ち退き料を払わずに済まそうというセコイ地主の指示だ。そしてその地主は偶然ジョシュの継父だった!

アパートの住人らがクリッターの襲撃を受けてパニックになっている最中、地主とジュシュ親子が偶然やってくる。継父はジュシュを跡継ぎにするため、物件を見せて回っていたのだ。クリッターの鳴き声を聞き「ペットを飼ってやがるな。住民も動物と変わらん」と、安アパートに住むような人間をとことん蔑んでいる地主だが、クリッター達にあっさり噛み殺され、ジョシュと姉弟が奇遇にも再開する。

住人達が避難した無人の部屋で、クリッター達は料理や食材を貪り食い、それを互いに投げ合い、撒き散らして大暴れ。酒を呷るようにキッチン洗剤を飲む奴も。そしてクライマックス、住人達が絶体絶命のピンチに追い込まれたその時、「ア~アア~!」とチャーリーがターザンのように参上し、SFチックなガンで2匹のクリッターを木端微塵! レオ様も1匹叩き潰し、もう1匹はお婆さんがナタでスイカのように真っ二つ! 死体の傷口からキッチン洗剤の泡(笑)。4匹全部倒して住人らは屋上で助けを呼ぶが......。この続きは『クリッター4 ファイナル・ウォーズ』(92年)で。なんとクリッターが保護動物に指定され、チャーリー最後の戦いは宇宙が舞台に! あ、もうレオ様は出てきませんが(苦笑)。

もっこりタイツが恥ずかしすぎる『スーパージャイアンツ』の宇津井健、『七色仮面』の千葉真一、『遊星王子』の梅宮辰夫と、みんな駆け出し時代は仕事を選ばず頑張った。それに比べてレオ様は、変テコな扮装をしないで怪物と戦うことができた。そろそろ胸を張って、デビュー作の思い出を語って欲しいな。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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